「そろそろ復職を考えなきゃいけないのかな」
休職に入ってしばらく経つと、ふとした瞬間にこの言葉が頭をよぎるようになりました。少し体調が戻ってきて、朝起きるのが少し楽になって、けれどそのぶん「いつまで休んでいていいんだろう」という別の不安が顔を出してくる。
同時に、戻ることを想像すると、また別の不安が湧いてきました。戻ったらどう思われるんだろう。連絡を取ること自体、気まずい。そもそも、戻っても本当に働けるのか。
この記事では、私が休職中に「復職を考え始めた頃」に整理しておいてよかったこと、考えておけばよかったことを、3つの準備としてまとめます。
先にお伝えしておくと、私自身は、最終的に正規教員としての復職ではなく、非常勤講師という形で教育に関わる道を選びました。そのためこの記事は、「復職してうまくいった体験談」ではありません。ただ、復職を考える中で何が不安だったのか、何を整理しておけばよかったのかは、今振り返ると強く感じています。
復職を急いでいる方にも、戻るかどうか迷っている方にも、まずは落ち着いて読んでもらえたらうれしいです。
まず結論:復職前の準備で大事なのは「戻れるか」より「無理なく続けられるか」
結論から書きます。
復職を考えるとき、ついフォーカスしてしまうのは「戻れるかどうか」という一点です。けれど、振り返って思うのは、本当に大事なのは「戻った後、無理なく続けられるかどうか」だということでした。
戻れるかだけを基準にすると、「とにかく戻ること」が目的になってしまいます。そうすると、復職した直後にまた体調を崩してしまったり、続けるのがしんどくなってしまうケースが出てきます。
戻ること自体は、ゴールではなく、新しい働き方のスタートにすぎません。だからこそ、復職前に整理しておきたいのは、「いつ戻れるか」よりも、「戻った後の毎日をどう続けられそうか」のほうだと、私は思います。
教員の復職までの大まかな流れ
具体的な準備の話に入る前に、教員が復職するまでの大まかな流れを整理しておきます。
細かい部分は自治体・任命権者(教育委員会など)によって異なりますが、おおむね次のような4ステップで進むケースが一般的です。
ステップ1:主治医と相談する
復職を考え始めたら、まずは主治医(休職に至った診断を出してくれた医師)と相談するのが入り口になります。「そろそろ戻れそうか」「もう少し休んだほうがよいか」を、自分一人で抱えずに、医師の判断材料に加えてもらいます。
受診〜診断書の受け取りまでの一般的な流れについては、別記事の教員が休職用の診断書をもらう手順もあわせて参考にしてみてください。
ステップ2:勤務先・教育委員会へ意向を伝える
主治医と話したうえで、復職の意向を勤務先(管理職)や教育委員会の人事担当に伝えます。この段階で必要書類や面談の流れの案内があり、自治体ごとに細かい違いが出てきます。
校長との面談で実際に聞かれた内容や、休職開始時の手続きについては、教員の休職手続き|校長の家庭訪問で聞かれた5つの質問に詳しくまとめています。
ステップ3:産業医や復職判定の面談
自治体によっては、産業医や教育委員会指定の医師との面談、復職判定会議のようなプロセスが入ります。本人の状態、医師の意見、勤務先の受け入れ体制などを総合的に見て、復職の可否や時期が判断されます。
大事なのは、復職判定は本人だけで決めるものではなく、医師・産業医・勤務先などの合議で進むということです。「もう大丈夫」と自分で結論を出すのではなく、関係者と一緒に判断していく流れになります。
ステップ4:試し出勤・リハビリ勤務(自治体差あり)
自治体によっては、本格的な復職の前段階として、試し出勤、リハビリ勤務、復職支援プログラムといった制度が用意されている場合があります。短時間勤務から始める、特定の業務だけ担当する、といった形で段階的に職場に戻る仕組みです。
ただし、この制度の有無・名称・運用は自治体によって大きく異なります。実施されているか、自分のケースで利用できるかは、教育委員会や人事担当に直接確認するのが確実です。
復職前に考えたい3つの準備
ここからが本題です。流れがわかったうえで、復職を考え始めたタイミングで整理しておきたい3つの準備を紹介します。
準備① 生活リズムと体調を「少しずつ」整える
休職中は、どうしても生活リズムが乱れがちです。眠れない夜が続いたり、起きる時間が遅くなったり、食事の時間がバラバラになったり。これは「だらしないから」ではなく、心身が回復に必要なペースを取っているだけなので、責める必要はまったくありません。
ただ、復職を考え始めたら、少しずつ「働いていた頃の生活リズム」に体を慣らしていくと、戻ったあとの負担が違ってきます。
私が休職中に意識していたのは、こんな小さなことでした。
- 朝、なるべく決まった時間に光を浴びる(カーテンを開けるだけでも)
- 食事の時間を、ゆるく一定に近づける
- 夜は遅くなりすぎないように寝る準備をする
- 無理のない範囲で、外に出る時間を少しずつ作る
大事なのは「少しずつ」です。いきなり完全な勤務リズムに戻そうとすると、それ自体がストレスになります。「来週はちょっと早く起きる練習をしてみる」くらいで十分だと、いまは思っています。
体調についても同じで、「全部回復してから戻る」を目指すと、いつまでも踏み出せなくなることがあります。復職を目指す場合は、主治医と相談しながら、「今の状態で無理なく働き続けられそうか」を一緒に確認していくことが大事だと感じました。
準備② 仕事に戻る不安を、ひとつずつ書き出して整理する
復職を考え始めると、不安はひとつの大きな塊として頭の中に居座ります。「戻るのが怖い」「うまくいかなそう」と、ぼんやりした言葉のまま、夜になると重くなる。
このとき効くのが、不安をひとつずつ書き出すことでした。
頭の中にあるうちは「全部怖い」と感じる不安も、紙やメモアプリに書き出してみると、意外と数が限られていることに気づきます。
- 戻ったとき、職員室に入る瞬間が怖い
- 休んでいたことを、同僚にどう説明していいかわからない
- 授業の感覚を取り戻せるか不安
- また体調を崩したらどうしようと考えてしまう
- 担任を持つことになるのか、業務量はどうなるのかが見えない
ひとつずつに分けてみると、「これは事前に校長に確認すれば解消できる不安」「これは戻ってみないと答えが出ない不安」「これは時間が解決するかもしれない不安」というふうに、性質が違うことがわかってきます。
すべての不安を消す必要はありません。「どれが、自分の力で動かせる不安か」だけでも分かると、復職への向き合い方がずいぶん落ち着きます。
準備③ 学校・主治医・教育委員会との調整を、ひとつずつ進める
3つ目は、いちばん地味で、いちばん大事な準備です。関係者との調整を、できる範囲で進めておくこと。
具体的には、おおよそ次のような確認や相談があります。
- 主治医に「復職を考えている」ことを伝え、判断を仰ぐ
- 必要であれば、復職可の意見書・診断書を依頼する
- 勤務先(管理職)に意向を伝え、面談の段取りを確認する
- 教育委員会の人事担当に必要書類・手続きを確認する
- 自治体に試し出勤・リハビリ勤務などの制度があるか確認する
- 担任や校務分掌の配慮があるかを、可能な範囲で相談する
全部を一気に進める必要はありません。むしろ、ひとつずつ、自分のペースで動くことが大事です。
「いきなり管理職に連絡するのは気が重い」というときは、まず主治医にだけ相談する、教育委員会の窓口に制度の一般論だけ聞く、といった小さな一歩から始めて構いません。
大事な原則は、復職判断は本人だけで決めるものではなく、医師・勤務先・教育委員会との確認が必要だということです。一人で抱えなくていいと、覚えておいてください。
私が復職を考えたときに怖かったこと
ここからは、私の体験談になります。「準備の話だけ知りたい」という方は、次のセクションまで読み飛ばしていただいて構いません。
休職中、復職という言葉が頭をよぎるたびに、私が感じていた怖さは、おおむね次の3つでした。
戻ったらどう思われるか
休んでいる期間が長くなるほど、「戻ったときに、まわりはどう思うだろう」という想像が止まらなくなりました。
「あの人、ようやく戻ってきたんだ」「もうしばらく休めばよかったのに」「逆に、何でこんなに長く休んでたの」。実際には誰も言っていないのに、頭の中で複数の声が出てきます。
振り返ると、私の場合は、「相手がどう思うか」への不安と同じくらい、「自分が自分を責めていたこと」も大きかったのだと思います。だからこそ、周りの反応の想像より、自分の状態を見つめ直すことのほうが、結果としてよかったのだと感じます。
学校の先生と連絡を取ること自体の気まずさ
もうひとつ大きかったのが、学校の先生方と連絡を取ること自体の気まずさです。
電話を一本かけるだけ、メールを一通送るだけのことが、ものすごく重く感じる時期がありました。「何て切り出せばいいんだろう」「いまの自分の声で大丈夫だろうか」と、受話器を持ったまま動けないこともありました。
連絡できない自分を責めそうになるたびに、「いまはまだ、その段階ではないのかもしれない」と自分を許すように心がけていました。
戻っても、本当に働けるのか
3つ目は、いちばん根っこにあった不安です。戻った後、自分は本当に働けるのか。授業を回せるのか。子どもたちと向き合えるのか。また同じように倒れてしまわないか。
これは、書き出してみても答えがすぐには出ない、重い不安でした。
私はこの問いに、休職中ずっと向き合い続けて、最終的には「正規教員としての復職」ではなく、「非常勤講師として教育に関わり続ける」という別の答えを出しました。これは、私のケースとしての結論であって、誰かにそうしてほしいという話ではありません。
復職を急がなくていい理由
準備の話と、私の不安体験を経て、いまの私が思っていることを書いておきます。
復職判断は、本人だけで決めるものではない
復職に踏み切れない自分を責める日が、私にもありました。「いつまで休んでいるつもりなのか」と、自分で自分に問いかけてしまうような夜です。
でも、何度かそういう夜を超えて思ったのは、復職判断は、本人だけで決めるものではないということでした。医師の判断、勤務先の受け入れ状況、教育委員会の制度、自分の体調。複数の要素が重なって決まるものです。
だから、自分一人で「もう戻らなきゃ」と背負い込まなくて大丈夫です。それは無理を生む構造でもあります。
焦って戻ることで、再び体調を崩す可能性もある
もうひとつ、頭の片隅に置いておきたい事実があります。焦って復職した結果、また体調を崩して再度休職に入る、というケースもあるということです。
これを「失敗」と呼びたくはありません。誰の責任でもなく、回復の途中で起きうる出来事です。
ただ、せっかく整いかけている心身を、もう一度大きく揺らしてしまうのは、本人にとっても周囲にとっても、できれば避けたいことだと思います。だからこそ、復職前の準備の中で「無理なく続けられそうか」をしっかり見ておく必要があります。
整ってから戻るほうが、結果として早いこともある
復職が遅れれば遅れるほど、その分まわりに迷惑がかかる。そう思って、整いきらないうちに復職を選ぶ気持ちは、私もよく分かります。
ただ、振り返ると、焦って中途半端に戻ってまた休むよりも、もう少し時間をかけて整えてから戻った方が、結果として早く落ち着けるケースもあるのではないかと思っています。
「いま戻る」と「いつ戻るか決めずに整える」のあいだに、選択肢はもう少し広く取って大丈夫です。
復職しない選択肢もある
最後に、短く触れておきたいことがあります。
復職を考える時期に、頭のどこかに「そもそも、戻らないという選択肢はないのだろうか」という問いが浮かぶ方もいると思います。私自身がそうでした。
結論から言えば、復職しない選択肢もあります。教員という仕事を完全に離れるのではなく、非常勤講師として教科指導中心の働き方に切り替える、副業や複業を組み合わせる、いったん別業界に移る、独立的な働き方に近づいていく。選択肢はいくつかあります。
私自身も、休職中に何度もこの問いと向き合い、最終的に「正規教員としての復職」ではなく「非常勤講師として教育に関わる」道を選びました。これは私のひとつの答えであって、誰かに勧めるものではありません。
退職や別の働き方を視野に入れている方は、教員を辞めた後の働き方|私が非常勤講師と副業を選んだ理由や、教員から転職した私が選んだ働き方 4パターンもあわせて読んでみてください。
まとめ:「戻る」も「戻らない」も、自分を守る選択肢のひとつ
復職を考えるときに整理しておきたい3つの準備を、もう一度おさらいしておきます。
- 準備①:生活リズムと体調を「少しずつ」整える
- 準備②:仕事に戻る不安を、ひとつずつ書き出して整理する
- 準備③:学校・主治医・教育委員会との調整を、ひとつずつ進める
そして、復職前にもう一段大事だと感じているのが、「戻れるか」だけでなく「戻った後、無理なく続けられそうか」も同じくらい大事にすることです。
復職する道も、復職しない道も、どちらかが正解というものではありません。どちらも、自分の体と心を守りながら、自分に合う働き方を探していくための選択肢のひとつだと、私は思っています。
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無理せず、ご自身のペースで、戻る・戻らないを焦って決めずにいきましょう。


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