「このまま教員しかやれないのかな」
「辞めたところで、潰しがきかないって先輩に言われた」
「副業禁止って決まってるし、外の世界に出る勇気もない」
かつての私も、まったく同じことを思っていました。朝7時に出勤して、夜9時に学校を出て、土日も部活や行事準備で潰れる日々。気づけば自分の時間も、自分の感情も、どこかに置き忘れていた――そんな感覚を、同じように抱えている方は少なくないはずです。
この記事を書いているのは、元小学校教員として10年以上現場に立ち、今は非常勤講師としてこどもスクールで金融・IT教育に関わりながら、ブログ「だにえるハウス」を運営しているだにえるです。2026年の今、改めて「あの頃の自分に伝えたかったこと」をまとめています。
この記事でお伝えするのは、決して「教員を辞めよう」という話ではありません。「教員しか道がない」という思い込み――私はそれを『副業禁止』の呪いと呼んでいます――から、どうやったら自分を自由にできるか。その一歩を、同じ場所にいるあなたと一緒に考えたいのです。
この記事でわかること
- 教員7年目で感じた「すり減っていく感覚」の正体
- 「副業禁止」「教員は潰しがきかない」という呪いの構造
- なぜ教員はこの呪いにかかりやすいのか(制度・文化・心理の三層)
- 文科省・OECDデータで見る、同じ呪いに苦しむ教員の姿
- 呪いを解くための具体的な最初の一歩
- 私が発信を始めた本当の理由と、10年経った今だから言えること
7年目で感じた違和感――「私、すり減ってる」
教員になりたての頃の私は、本当にまっすぐでした。「子どもたちの人生に関わる仕事をしたい」「一人でも多くの子に、学ぶ楽しさを伝えたい」――そんな言葉を、本気で信じていた。初任の年、はじめて担任したクラスの子どもたちの顔は、10年以上たった今でも鮮明に覚えています。
1年目、2年目、3年目。確かに大変でした。教材研究は終わらないし、保護者対応は気を使うし、校務分掌は年々重くなる。でも、それでも「しんどさの向こうに手応えがある」感覚があった。夜遅くまで教材を作って、翌日子どもたちが食いついてくれた瞬間の嬉しさ。問題を抱えた子と根気強く向き合って、少しずつ心を開いてくれた瞬間の感動。
ところが、7年目あたりから、何かが明らかにおかしくなりはじめたのです。
朝、学校に向かう足が重い
最初のサインは、朝でした。目覚ましが鳴った瞬間、胸の奥が重くなる。ベッドから起き上がるまでに10分、20分とかかるようになる。出勤途中、信号待ちのたびに「このまま引き返したらどうなるんだろう」と、ほんの一瞬だけ本気で考えてしまう自分に気づく。
1年目の頃は、あんなに楽しみにしていた教室。なのに、職員室の自分のデスクに着いた瞬間、「今日もこれから10時間以上ここにいるのか」と、ため息が出る。
子どもを「可愛い」と思えない日が増えた
これは、自分でもショックでした。子どもを可愛いと思えない。正確に言えば、「可愛いと思う気持ちを感じる前に、仕事として処理してしまう」感覚です。
休み時間に話しかけてきた子に、笑顔で応じる。でも心の中では「早く職員会議の資料作らなきゃ」「提出物チェックしなきゃ」と別のことを考えている。授業中、発言した子を褒める。でもそれは「褒めるべき場面だから褒める」という、反射のような行為になっている。
これは教員として、致命的な状態でした。教員の仕事は、目の前の一人ひとりに心を向けることが出発点。それができていないと気づいたとき、私は「自分は何をしているんだろう」と、強い罪悪感に飲まれました。
人との関わりすべてが、めんどくさい
保護者への電話が億劫で、報告を翌日、翌々日へと先延ばしにする。同僚との雑談に加わらず、一人でお弁当を食べるようになる。管理職に声をかけられるたびに、心臓がきゅっと縮む。
もともと私は、そこまで内向的なタイプではなかったはずです。なのに、人との関わりのエネルギー残量が、常に赤ランプ。家に帰ると、家族との会話すらしんどくて、ソファで30分ぼんやりしてからでないと口を開けない。
あとから振り返れば、これはすべて燃え尽き症候群(バーンアウト)の典型的な初期サインでした。でも当時の私は、「自分が弱いだけだ」「みんな頑張ってるのに、自分だけ甘えている」と思い込み、さらに無理を重ねてしまったのです。
体に出始めた異変――頭痛・不眠・謎の動悸
心のサインに気づかないふりを続けていると、必ず体に来ます。これは、あとから産業医の書籍を読んで知ったことですが、本当にその通りの順番で私の体に異変が起きました。
- 夕方になると、こめかみの奥がズキズキと痛む
- 深夜2時、3時に目が覚めて、そこから眠れない
- 職員会議の前になると、理由もなく心臓が早鐘を打つ
- 胃が常に重く、朝は何も食べられない
- 休日に寝込んでも、月曜の朝には疲労が抜けない
病院に行けば「ストレス性」と言われるだろうと、自分でもうっすら感じていた。でも、行く時間も、向き合う勇気もなかった。「忙しすぎて、自分の不調と向き合う余裕すらない」――これも教員に多い、危険なパターンです。
「このまま10年、20年続けられるのか?」という問い
決定的だったのは、ある秋の夕方。放課後、誰もいない教室で、窓の外を眺めていたときのことでした。ふと、こんな問いが浮かんできたのです。
「自分は、このペースであと10年、20年、定年まで続けられるのだろうか」
「続けられたとして、そのときの自分は、どんな顔をして教壇に立っているのだろうか」
「子どもたちに、どんな大人の背中を見せているのだろうか」
答えは、残酷なくらいはっきりしていました。今のままでは、続けられない。続けられたとしても、子どもたちに見せたい姿ではない。
これが、私が「何かを変えなければいけない」と本気で覚悟した瞬間でした。7年目の秋のことです。
「副業禁止」という呪いの正体
すり減っていく自分を感じながらも、私がなかなか行動に移せなかった理由。それは、職員室で空気のように漂っていた、いくつかの言葉でした。
- 「教員は副業禁止だからね」
- 「教員は潰しがきかないよ」
- 「民間なんて行っても、もっと大変だよ」
- 「定年まで勤めれば、それなりにもらえるんだから」
- 「教員しかやってきてない人間が、今さら何ができるの?」
どれも、悪意を持って言われていたわけではありません。むしろ、言った本人は「心配して」「現実を教えてあげている」つもりだった。でも、これらの言葉を繰り返し浴びることで、私は少しずつ「自分には選択肢がない」と信じ込まされていたのです。
私はこれを『呪い』と呼んでいます。悪霊のような話ではなく、繰り返し刷り込まれることで、事実ではないのに本当だと感じてしまう思い込み――つまり、呪縛のことです。
呪い①「副業は完全に禁止されている」
まず、最大の誤解がこれです。公立学校教員の副業は、「完全禁止」ではありません。
根拠となるのは地方公務員法第38条。ここには「任命権者の許可を受けなければならない」と書かれており、許可を受ければできると明記されています。実際、教育に関する講演、執筆、家業の手伝い、不動産収入、投資による配当など、一定の条件を満たせば認められるケースは珍しくありません。
さらに言えば、「収益化しないブログ」「SNSでの情報発信」「趣味の範囲での創作活動」などは、そもそも副業に該当しない場合がほとんどです。
教員ができる副業の具体例や、許可申請の実際については、教員でもバレずにできる副業5選とブログ副業の始め方6ステップで詳しくまとめているので、あわせて読んでみてください。
副業に該当しない活動の例(2026年時点の一般的な解釈)
- 収益化していないブログ・SNS発信
- 家族名義の資産運用(投資信託・株式の配当)
- 趣味の範囲での創作活動(同人誌・音楽制作など)
- 親族の家業を無償で手伝うケース
- 無償のボランティア活動
ただし、「何が副業にあたるか」は自治体・学校種によって解釈が異なる場合があります。判断に迷うときは、必ず所属教育委員会の服務規程を確認し、必要なら管理職や事務担当者に相談してください。自己判断だけで動くのではなく、しっかり根拠を押さえた上で行動することが、身を守る意味でも重要です。
呪い②「教員は潰しがきかない」
次に大きい呪いがこれです。「教員は民間で通用しない」「スキルがない」――でも、冷静に考えてみてください。
教員が日常的にやっている仕事を棚卸しすると、こうなります。
- プロジェクトマネジメント:年間カリキュラム・行事の企画運営・進捗管理
- プレゼンテーション:毎日5〜6コマ、40人の前で話す
- クライアント対応:保護者面談・三者面談・苦情対応
- チームマネジメント:学年部・校務分掌のリーダー業務
- データ分析と改善:学力調査・成績データの分析と授業改善
- ドキュメント作成:指導案・通知表・各種報告書
- 危機管理:いじめ対応・事故対応・緊急時の判断
これらはポータブルスキル――業界を越えて通用するスキル――のかたまりです。人材業界・営業・研修講師・企画職・広報・カスタマーサクセス。教員経験者が活躍している分野は、実は驚くほど広い。
詳しくは教員が転職市場で活かせるポータブルスキル5選にまとめました。「自分には何もない」と思っているあなたに、まず読んでほしい記事です。
呪い③「転職しても、もっと辛くなる」
これもよく聞きました。「民間はもっと厳しい」「ノルマで潰される」「教員のほうがマシ」。
でも、2026年の今、民間の働き方は大きく変わっています。フレックスタイム、リモートワーク、週4勤務、副業可、男性育休、成果主義の見直し――「24時間戦えますか」の時代はとっくに終わっているのです。
もちろん業界・企業によって差は大きい。でも、「教員より働きやすい職場」は、想像以上にたくさんあるのが現実です。私自身、実際に転職活動をしてみて、心底驚きました。
教員経験を特に活かしやすい業界・職種については、教員からの転職で人材紹介業界がおすすめな理由と元教員が選ぶ転職先おすすめ4選で具体的に解説しています。
呪い④「辞めたら、給料と安定を失う」
これも根深い呪いです。「教員は安定している」「退職金もあるし」「福利厚生が充実している」。たしかに、これらは事実の一面です。
でも、よく考えてみてください。「安定」と引き換えに、何を差し出しているか。
- 長時間労働と、残業代ゼロの仕組み
- 体を壊しても替えが効かないプレッシャー
- 年功序列で、若手の給料は想像以上に低い
- 評価制度の形骸化で、頑張っても頑張らなくても同じ
- 転勤の多さ、希望が通らない人事
- そして何より、心身の健康
2026年現在、民間の給与相場は上がり続けています。特にIT・人材・コンサル系では、30代で教員の年収を上回る水準は珍しくありません。「辞めたら収入が下がる」はもはや、どの業界に行くかによって変わる時代になっているのです。
呪い⑤「今さら、新しいことなんて覚えられない」
30代、40代になって転職を考えると、多くの方が口にするのがこの言葉です。「もう遅い」「若い人に勝てない」「PCスキルもないし」。
でも、考えてみてほしい。教員は毎年、新しい指導要領を読み、新しい教材を研究し、新しい子どもと出会い続けている職業です。学び続ける筋肉は、他のどんな職業よりも鍛えられているはず。
「新しいことを覚えられない」のではなく、「新しいことに踏み出す勇気が残っていない」だけ。そしてその勇気は、小さな一歩を積み重ねることで、必ず戻ってきます。
40代・50代からでも動き出せる理由
人生100年時代と言われる中、40代・50代はもはや「キャリアの後半戦」ではありません。定年後まで含めれば、まだ20〜40年の現役時間があります。
- 50代で副業を始めて、定年前に独立した元教員
- 40代で教員を辞めて、人材業界で管理職になった例
- ベテラン教員がそのまま教育系企業の顧問として迎えられるケース
これらは、実際に私の周辺で起きている話です。経験が価値になる年齢だからこそ、動き出す意味がある。そう思えれば、一歩目のハードルはぐっと下がります。
なぜ、教員はこの呪いにかかりやすいのか
「呪いだ」「思い込みだ」と言葉で言うのは簡単です。でも、多くの教員が本当にこの呪いにかかって苦しんでいる。それには構造的な理由があります。私なりに整理したのが、次の4つです。
① 採用時点からの「聖職」刷り込み
教員採用試験の面接、初任者研修、校長講話。この過程で繰り返し伝えられるのは、「教員は特別な仕事」「子どもの人生を預かる聖職」「一生の使命」といったメッセージです。
これ自体は、職業倫理として大切な側面もあります。でも、「特別な使命 = 他の選択肢を考えてはいけない」という誤った等式が、いつの間にか刷り込まれてしまう。転職を考えることが「裏切り」「逃げ」「不誠実」のように感じられるのは、この刷り込みの副作用です。
② 労働基準法36条が適用されない特殊な構造
意外と知られていませんが、公立学校の教員には労働基準法第36条(いわゆる36協定)が適用されません。
代わりに、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)により、給料月額の4%の「教職調整額」が支給される代わりに、時間外勤務手当は支給されない仕組みになっています。
つまり、どれだけ残業しても、どれだけ土日出勤しても、法的には「自主的な勤務」扱い。残業代はゼロ。働いた分だけ評価される民間の感覚が、そもそも存在しない世界なのです。
この構造の中にいると、「働いた時間と報酬が連動する」という社会の基本感覚を失っていきます。そして「外の世界には適応できない」という錯覚につながっていく。
③ 世間体と「先生らしさ」のプレッシャー
「先生」という肩書きは、地域社会で独特の重みを持ちます。親戚に会えば「先生、立派ね」と言われ、友人に会えば「子ども好きなんだね」と持ち上げられる。地元で子どもの保護者と出くわすたびに、姿勢を正す。
この「先生らしさ」の鎧は、誇りでもあり、同時に呪いでもあります。脱いだ瞬間に、何者でもなくなってしまう気がする。だから脱げない。
④ 自己効力感の継続的な低下
長時間労働、理不尽なクレーム、成果が見えにくい仕事、評価制度の形骸化。これらが重なると、「自分は何をやっても無駄」という学習性無力感に陥っていきます。
この状態になると、たとえ「外に可能性がある」と頭で理解できても、心が動かない。動くエネルギーが残っていないのです。
呪いは、ただの言葉の問題ではありません。制度・文化・心理の三層が絡み合ってできている。だから、抜け出すには小さな行動を積み重ねるしかないのです。
⑤ 「子どもたちのために」という言葉の副作用
もうひとつ、見逃せない要素があります。それは、「子どもたちのために」という言葉が、自分を追い込む道具になってしまう現象です。
残業するのは「子どもたちのため」。休日出勤するのも「子どもたちのため」。理不尽なクレームに耐えるのも「子どもたちのため」。休まないのも、文句を言わないのも、すべて「子どもたちのため」。
気高い動機ですが、この言葉は諸刃の剣です。使い続けていると、自分のケアを後回しにする習慣が身についてしまう。そして、本当に疲弊した教員のもとでは、子どもたちも元気にはなれない。これは、現場に長くいた者として、断言できる事実です。
「子どもたちのために」を本気で思うなら、まず自分を大切にする。飛行機の酸素マスクと同じで、自分が倒れたら誰も助けられない。その順序を、もう一度思い出してほしいのです。
実際、私自身も一時期「子どもたちのために休めない」と自分を追い込んでいました。でも、疲弊した状態で立つ教壇から子どもたちに伝わるものは、ほとんどありませんでした。むしろ、いったん休んで回復した後のほうが、授業も学級経営も格段に良くなったのです。自分を大切にすることは、プロとしての責任でもあると、今では胸を張って言えます。
データで見る、同じ呪いに苦しむ教員たち
「自分だけが弱いのではないか」「周りの先生はみんな頑張れているのに」――そう感じる方のために、公的なデータを紹介します。これを読めば、あなたが感じている違和感は、あなた一人のものではないと、きっとわかるはずです。
精神疾患による休職者数は過去最多を更新
文部科学省が毎年公表している「公立学校教職員の人事行政状況調査」によれば、精神疾患を理由に休職した公立学校教員の数は、ここ10年で右肩上がり。近年は年間6,000人〜7,000人規模で推移し、過去最多を更新し続けています。
これは在職者の約1%に相当します。つまり、全国の学校にほぼ必ず、休職しているか休職寸前の教員がいる計算です。
私自身、休職は経験していませんが、休職寸前まで追い込まれた時期の話はうつ病で休職する直前の体験談に詳しく書きました。「自分だけかもしれない」と感じている方にこそ、読んでほしい記事です。
若手教員の離職率が上昇傾向
採用から3年以内に離職する若手教員の割合も、年々上昇しています。自治体によって差はあるものの、一部の都市部では採用3年以内の離職率が10%を超えるというデータも出ています。
これは、「安定志向で選ばれる職業」だったはずの教員像が、現場では大きく揺らいでいることを示しています。
OECD調査:日本の教員は世界一長く働き、自己効力感は世界最低クラス
OECD(経済協力開発機構)が実施する「国際教員指導環境調査(TALIS)」によれば、日本の教員の労働時間は調査対象国の中で最長クラス。一方で、「子どもたちに学びを引き出せている」という自己効力感を示す指標は、最下位クラスです。
長く働いているのに、自分の仕事に手応えを感じられない。このギャップこそが、多くの日本人教員を苦しめている実態です。
採用倍率の低下と「教員不足」の顕在化
小学校教員の採用倍率は、かつて10倍を超えていた時期もありましたが、近年は2倍台〜3倍台まで低下。一部自治体では、年度途中の欠員を埋められず、担任不在のまま学期が始まる「教員未配置問題」が深刻化しています。
これは、「教員を目指す若者が減っている」「辞める教員が増えている」ことの複合結果です。つまり、業界全体が変化の瀬戸際にある。一人の個人としても、自分の身の振り方を冷静に考える時期に来ているのです。
現役教員の「辞めたい」意識調査
民間の教育系団体や、教員向けメディアが実施するアンケート調査を見ると、さらに踏み込んだ数字が見えてきます。
- 「今後も教員を続けたい」と明確に回答する教員は、調査によって差はあるものの40〜60%程度
- 「辞めたい」「転職を考えたことがある」と答える教員は30〜50%に及ぶ
- 若手(20代)では「続けたい」の割合がさらに下がる傾向
つまり、2人に1人近くの教員が、何らかの形でキャリアの選択肢を模索しているということ。あなたが感じている迷いは、決して少数派ではないのです。
副業・兼業を認める自治体が少しずつ増えている
近年、教育委員会の中には、教員の兼業・副業を積極的に認める方向へ舵を切っている自治体も出てきています。特に、教育や社会貢献に関わる活動――NPO運営、講演、執筆、大学非常勤講師など――は、許可申請の上で認められる例が増加中。
つまり、「副業禁止」は過去の常識になりつつある。制度そのものが変わり始めている今こそ、情報を集めて動く価値があるタイミングです。
※データはいずれも2020年代の文部科学省公表資料およびOECD TALIS調査に基づきます。最新数値は各機関の公表情報をご確認ください。
呪いを解くための最初の一歩
ここまで読んでくれたあなたは、おそらく「何かを変えたい」と心のどこかで感じている方だと思います。でも、いきなり退職・転職・独立と考えると、足がすくむ。当然です。
そこで、10年以上現場にいて、実際に発信活動を軌道に乗せた私が、「これだけはやっておいたほうがいい」という小さな一歩を5つに絞ってお伝えします。
ステップ1:自分の「すり減りサイン」を紙に書き出す
まず、スマホのメモでも紙でもいいので、「最近、自分がしんどいと感じる具体的な場面」を書き出してみてください。
- 月曜朝、起きたくない
- ◯◯先生と話すのが怖い
- 保護者からの電話が鳴ると動悸がする
- 日曜の夕方、急に涙が出てきた
言語化すると、「なんとなく辛い」が「具体的に◯◯が辛い」に変わります。ここから初めて、対策が立てられる。頭の中でぐるぐる考えているだけだと、呪いは解けません。
ステップ2:校外の人と1対1で話す機会を作る
呪いは、同じ環境の中にい続けると強くなります。職員室の外にいる、信頼できる一人と話すだけで、視界はがらりと変わる。
- 大学時代の友人(民間で働いている人)
- 元教員で別の道に進んだ先輩
- 信頼できる家族
- キャリアカウンセラー
相手は「教員の事情に詳しい人」でなくて大丈夫。むしろ、外の世界の感覚を持っている人と話すほうが、自分の常識が相対化されます。
ステップ3:転職サイトに登録だけしてみる
「辞める前提じゃなくていい」。これが大事なポイントです。登録するだけで、「自分のスキルが、外の市場でどう評価されるのか」が見えてきます。
- 職務経歴書を書くために、自分の経験を棚卸しする
- スカウトメールが来ると、「自分を求めている場所がある」と体感できる
- キャリアアドバイザーと話すと、外部視点でのフィードバックがもらえる
この段階では、転職する・しないは決めなくていい。「選択肢がある」と知るだけで、呪いは半分ほどける。これは私自身が実感したことです。
ステップ4:「副業として許可されうる活動」を小さく始める
ブログを書いてみる。note を始めてみる。投資の勉強を始めてみる。収益化しない範囲なら、そもそも副業に該当しません。収益化する段階になったら、そこで初めて任命権者への相談を検討すればいい。
この「自分の名前で何かを積み上げる」経験は、教員という肩書き以外の自己肯定感を少しずつ育ててくれます。呪いが解けていく最大の実感が、ここにあります。
具体的な始め方はブログ副業6ステップをぜひ参考にしてください。
ステップ5:「辞めるかどうか」を決めない期間を、自分に許す
最後に、これが一番大事かもしれません。「今すぐ決めなくていい」「迷っていていい」と、自分に許可を出してあげてください。
呪いにかかっている状態では、正しい判断はできません。まずは情報を集め、選択肢を知り、体と心を少しずつ回復させる。その上で、半年後、1年後、自分が一番納得できる道を選べばいい。
「迷うこと」は、弱さではありません。複数の選択肢を見据えて考えている、成熟した大人の態度です。
補足:休むことも、立派な一歩
ここまで5つのステップを紹介してきましたが、もしあなたが「もう動く気力すら残っていない」状態なら、まずは休んでください。
有給を使う。週末ゆっくり寝る。心療内科を受診する。必要なら休職する。これらはすべて、次の一歩を踏み出すための、必要不可欠な準備です。
「休むなんて甘えだ」と感じるなら、それこそが呪いです。スマホのバッテリーが0%になったら充電するのと同じで、人間のエネルギーも定期的にチャージしなければ動けない。当たり前のことを、自分にも許してあげてください。
私の経験では、一度本気で休んだ期間があったからこそ、その後の選択肢を冷静に見渡せるようになりました。休む前は「辞める / 続ける」の二択しか見えなかったのに、休んだ後には「休職から復帰 / 校種を変える / 非常勤に転向 / 副業を育てる / 完全転職」など、多様な選択肢があることに気づけたのです。休むことは、視界を取り戻す作業でもあるのだと、今なら言えます。
私が発信を始めた、本当の理由
ここからは、少し個人的な話です。私――だにえるが、なぜブログという形で発信を始めたのか。その本当の理由を書かせてください。
きっかけは、職員室で交わされた何気ない一言
教員7年目のある日、後輩の若手教員が、職員室の隅で泣いているのを見かけました。保護者からの理不尽なクレームで、心が折れてしまった瞬間でした。
先輩教員が寄り添って、こんな言葉をかけていました。
「でも、辞めても潰しがきかないからね。頑張るしかないよ」。
その瞬間、私の中で何かがはじけました。
「違う。それは慰めじゃない。呪いだ。」
心の中でそう叫んでいました。
同じように、過去の自分も何度もその言葉をかけられ、そして受け入れてきた。その結果、何年もの間、外の世界を見ないまま、自分の心をすり減らし続けてしまった。
「自分が先に動いて、この呪いの正体を言語化できれば、同じ場所で苦しんでいる誰かの逃げ道になれるかもしれない」。
そう思ったのが、発信を始めた直接のきっかけでした。
匿名でも、自分の言葉なら残せる
最初は、かなり悩みました。現役教員として、学校のことをネットに書くことへの後ろめたさ。同僚や管理職に知られたらどうしようという不安。
でも、ブログという形式なら、匿名で、自分のペースで、現場のリアルを言葉として残せる。収益化しない範囲なら、副業にもあたらない。何より、書いている自分自身が、書くことで少しずつ救われていく実感がありました。
書くことで、呪いが言葉に変わった
不思議なことに、「しんどい」「辛い」という霧のような感情は、文章にして誰かに届くことを想定した瞬間に、一気に輪郭を持ち始めます。
- なぜ自分は辛いのか
- 何が自分を追い詰めているのか
- どこに出口がありそうか
- 過去の自分に、何を伝えたかったか
これらが、書けば書くほど明確になっていく。そして、読者から「私も同じ気持ちでした」「救われました」というコメントが届くたびに、「自分の苦しみには意味があったんだ」と思えるようになっていきました。
10年経った今だから言えること
発信を始めてから時が流れ、2026年の今、私は現場を離れ、こどもスクールの非常勤講師として小学生に金融・IT教育を届けながら、ブログやYouTubeを通じて発信を続けています。
10年以上のキャリアのうち、前半は「呪いに飲まれていた時期」、後半は「呪いをほどきながら新しい道を模索した時期」でした。両方あったからこそ、今があります。
断言できることがひとつだけあります。
教員を辞めなくても、続けなくても、発信はできる。副業もできる。自分の人生の設計図を、自分で描くことができる。
それを知っているのと知らないのでは、毎日の職員室の空気すら違って見えるはずです。
発信を続ける中で、見えてきた「教員経験の価値」
ブログを書き始めて気づいたのは、教員としての経験が、まったく無駄ではないどころか、大きな資産になるという事実でした。
- 「わかりやすく伝える」技術は、ブログでもYouTubeでも最強の武器になる
- 子どもたちを飽きさせない授業構成は、動画の構成にそのまま応用できる
- 保護者対応で培った「相手の不安に寄り添う」感覚は、読者への共感文にそのまま活きる
- 年間計画を立てる力は、コンテンツのロードマップ設計に直結する
教員以外の仕事をしている人から「すごい、どうやったらそんな構成で書けるの?」と言われたとき、初めて自分の経験の価値に気づきました。外の世界に出て初めて、自分が持っていた武器の形が見えるのです。
読者の声に救われた日々
忘れられないコメントがあります。ある現役教員の方からいただいた、こんなメッセージでした。
「だにえるさんのブログを読んで、初めて『自分は甘えていたわけじゃない』と思えました。明日、有給を使って心療内科に行ってきます。ありがとうございました」
涙が出ました。同時に、「自分の言葉には、力がある」と初めて信じられた瞬間でした。教員として目の前の子どもたちに向き合うのと同じくらい、文字を通じて全国の誰かに向き合うことにも、大きな意味がある。それを実感した日でした。
読者へ:あなたは、一人じゃない
ここまで読んでくださった、あなたへ。
もし今、「教員しか道がないのかな」「副業禁止だから何もできない」「潰しがきかないと言われ続けて動けない」――そんな思いの中にいるなら、どうか覚えておいてほしい。
あなたが感じている閉塞感は、あなたの弱さではありません。
制度と文化と刷り込みが作り上げた、構造的な呪い。だから、個人の努力や根性で飲み込む必要はない。むしろ、「この違和感は正しい」と、自分の直感を信じてあげてほしいのです。
私はあなたに、「辞めなさい」とも「続けなさい」とも言いません。その決断は、あなた自身のもの。ただ、こう伝えたいのです。
- 情報を集めることは、裏切りじゃない
- 選択肢を知ることは、逃げじゃない
- 副業を検討することは、不誠実じゃない
- 転職サイトに登録することは、悪じゃない
- 発信することは、傲慢じゃない
- 迷うことは、弱さじゃない
どれも、「自分の人生を自分で選ぶ」という、当たり前で健全な行動。そしてその行動の積み重ねが、いつの日か呪いをほどいていきます。
もし、今夜眠れないくらい辛い状態にいるなら、一度立ち止まって休んでください。休むことは、次の一歩を踏み出すための準備です。私自身、休職寸前まで追い込まれた経験があるので、その重みはわかります。詳しい体験はうつ病で休職する直前の体験談にまとめているので、必要なときに覗いてみてください。
このブログは、かつての自分に向けて書いています。でも、読んでくださっているあなたにも、ほんの少しでも、明かりが届いていたら嬉しい。あなたは、一人じゃありません。
かつての自分に、今なら伝えたい5つのこと
最後に、もし時間を戻せるなら、7年目のすり減っていた自分にかけてあげたい言葉を5つ、ここに書き残します。これは、あなたにも届く言葉だと信じて。
① 「その違和感は、正しい」
職員室に満ちる諦めムード、働き方への疑問、先輩の呪いの言葉――すべてに感じていた違和感は、あなたの感覚が正常だという証拠です。「自分がおかしいのかも」と思う必要はありません。
② 「選択肢は、調べれば必ず見つかる」
視野が狭くなると「他に道はない」と感じますが、実際には副業・転職・独立・発信・休職・部分的な働き方など、組み合わせ次第で何通りもの選択肢が存在します。一人で抱え込まず、本やブログ、SNSから情報を集めてください。
③ 「体を壊す前に、逃げていい」
教員としての責任感は素晴らしい。でも、体と心は代替できない資産です。休職・退職・配置換え、どんな手段でも、自分を守ることが最優先。子どもたちも、倒れた先生を望みません。
④ 「教員経験は、絶対に無駄にならない」
たとえ明日、教員を辞めたとしても、これまで積み上げた経験は消えません。むしろ、教員を経験した人だからこそできる仕事・発信・ビジネスが、外の世界にはたくさん待っています。
⑤ 「動くなら、今日の小さな一歩から」
「いつか動こう」の「いつか」は、来ません。今日、このブログを閉じたあとに、たった一つだけでいいから現実を変える行動を起こしてみてください。本を一冊注文する。転職サイトに登録する。気持ちをノートに書き出す。それだけで、明日の景色は変わります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 公立学校の教員は、本当に副業が全面禁止なのですか?
A. 全面禁止ではありません。地方公務員法第38条で「任命権者の許可を受けなければ営利企業等に従事してはならない」と定められていますが、許可を受ければできるというのが正確な読み方です。実際、執筆・講演・家業の手伝い・不動産収入・投資による配当などは、条件を満たせば認められるケースがあります。詳しくは教員でもバレずにできる副業5選を参考にしてください。
Q2. 収益化しないブログは、副業にあたりますか?
A. 一般的に、収益化していないブログや情報発信は「趣味」の範囲とされ、副業に該当しないと解釈されています。ただし、将来的にアフィリエイトや広告で収入が発生する段階になったら、任命権者への相談・許可申請を検討するのが安全です。判断に迷う場合は、所属自治体の服務規程を必ず確認してください。
Q3. 「教員は潰しがきかない」は本当ですか?
A. まったく事実ではありません。教員は日常的に、プレゼン・プロジェクト管理・チーム運営・クライアント対応・ドキュメント作成・危機管理を並行して行っています。これらは業界を越えて通用するポータブルスキルです。人材業界、営業、研修講師、企画職、広報、教育系スタートアップなど、教員経験が高く評価される分野は多数あります。具体例は教員のポータブルスキル5選にまとめています。
Q4. 転職を考えていますが、何から始めればいいですか?
A. まずは「転職する・しない」を決めずに、情報収集だけ始めるのがおすすめです。具体的には、①自分のしんどさを書き出す、②校外の人と話す、③転職エージェントに登録して職務経歴書を作る、④副業や情報発信を小さく始める、の4ステップ。半年〜1年かけて情報を集めてから決断しても遅くありません。教員経験者向けの転職先候補は元教員が選ぶ転職先おすすめ4選と人材紹介業界がおすすめな理由で解説しています。
Q5. もう限界です。休職・退職は、キャリアに傷がつきますか?
A. 現代の労働市場では、休職経験だけで著しく不利になることはほとんどありません。むしろ、心身を壊して働き続けたほうが、長期的なキャリアにとってはるかにマイナスです。まずは信頼できる医師に相談し、必要なら休職や退職も選択肢として検討してください。一人で抱え込まないことが最優先です。休職直前の体験談はこの記事にまとめました。
Q6. 発信やブログ運営は、具体的にどう始めればいいですか?
A. 私自身もゼロから始めました。レンタルサーバー契約・独自ドメイン取得・WordPressインストール・記事執筆という6ステップで始められます。初期費用は月1,000〜1,500円程度。詳しい手順はブログ副業6ステップにまとめています。収益化しない段階なら副業にも該当しないので、気軽に始められます。
まとめ:呪いの外側には、思っているより広い世界がある
最後に、この記事で伝えたかったことを整理します。
- 「副業禁止」「潰しがきかない」は呪いの言葉。事実ではなく、刷り込みによる思い込みです
- 教員が呪いにかかりやすいのは、制度・文化・心理の三層構造が原因
- データで見れば、同じ苦しみを抱える教員は全国に数十万人規模で存在する
- 呪いをほどく方法は、小さな5つのステップの積み重ね
- 辞める・続けるを決めなくていい。選択肢を知るだけで、呪いは半分ほどける
- 発信・副業・情報収集は、すべて「自分の人生を自分で選ぶ」という健全な行動
教員として積み上げてきた時間は、絶対に無駄になりません。子どもたちと過ごした日々、保護者と向き合った経験、同僚と支え合った時間――それらはすべて、あなたの中に「人と関わる力」として残り続けています。
その力を、教員の中で活かし続けるのか、別の場所で咲かせるのか、副業として広げていくのか。選ぶのはあなた自身です。そして、どの選択も正解です。
もしこの記事が、あなたの呪いを少しでもほどく手がかりになったなら、これ以上嬉しいことはありません。焦らず、でも確実に、一歩ずつ。私も、発信を通じて応援し続けます。
最後に――教員を選んだあなたへ、敬意を込めて
この記事では、教員という職業の厳しさや構造的な問題を、かなり率直に書いてきました。それでも、最後にどうしても伝えたいことがあります。
教員を選んだあなたは、間違いなく誰かの人生に真剣に関わりたいと願った人です。その根っこにある優しさや正義感は、どの世界に行っても一番の武器になります。教員を続けるにせよ、別の道を歩むにせよ、その根っこだけは絶対に失わないでください。
呪いを解くことは、教員であることを否定することではありません。むしろ、「教員としてここまで頑張ってきた自分を、次は大切にする」ための行動です。あなた自身を大切にすることが、結果的に目の前の子どもたち、家族、そして未来の自分を救うことにつながります。
だにえるハウスでは、教員・元教員の方向けに、副業・転職・発信・休職・メンタルケアなど、さまざまな角度から記事をお届けしています。気になるテーマがあれば、ぜひ他の記事にも目を通してみてください。一緒に、呪いの外側の世界を歩いていきましょう。
そして、もしこの記事を読みながら「同じように悩んでいる同僚がいる」「昔の自分と重なる後輩がいる」と思い浮かんだら、そっとこのURLを共有してあげてください。誰かが呪いに気づき、言葉にしてくれることで、救われる人が必ずいます。情報が届かないことで苦しんでいる現役教員は、今も全国に数えきれないほどいるのです。
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