「休職を考えてはいるけれど、お金はどうなるんだろう」
正規教員として働いていた頃、私が休職という言葉を頭の中で何度も浮かべながら、最後の一歩を踏み出せなかった理由のひとつが、お金への不安でした。
毎月の家賃や生活費は止まらないのに、収入はどうなるのか。いきなり丸ごと給料が消えてしまうのか。それとも何かしらの支えがあるのか。当時の私は、そこを確かめないまま、ただ漠然と怖がっていたように思います。
この記事では、教員が休職を考えるときに知っておきたい、お金まわりの話を整理します。
- 病気休暇と病気休職は何が違うのか
- 給与はいつまで満額で、どこから減るのか
- 賞与(期末勤勉手当)への影響
- 公立学校共済組合の傷病手当金とは何か
- 自治体・勤務先で異なるところと、その確認の仕方
制度の話と、私自身の実感とは、章を分けて書いていきます。「制度を知ることで、必要以上に怖がりすぎない」を目標に、ご自身のペースで読んでみてください。
なお、休職に必要な診断書の取り方については、別記事の教員が休職用の診断書をもらう手順にまとめています。あわせてご覧ください。
まず結論:教員の休職中、給与はどうなるのか
大枠だけ先に書いておきます。
- 病気休暇の期間は、給与が支給されるのが一般的です。
- 病気休暇の期間が満了すると、病気休職に切り替わります。病気休職中は、給与の支給率が段階的に下がっていく仕組みになっています。
- 給与が減額されたり、無給期間に入った場合には、要件を満たせば公立学校共済組合の傷病手当金が支給されることがあります。
- 賞与(期末勤勉手当)は、休職期間に応じて影響を受ける仕組みです。
大事なのは、「休職=即無収入」ではなく、段階的な仕組みの中で、いくつかの支えがあるという事実です。具体的な期間や支給率は、自治体・任命権者(教育委員会など)によって細部が異なります。最終的な確認は、必ずご自身の勤務先(人事担当・教育委員会・共済組合)でしてください。
病気休暇と病気休職は何が違う?
休職まわりの話で最初につまずきやすいのが、この2つの言葉の違いです。
病気休暇:療養のための短期の休み
病気休暇は、療養のために一定期間、勤務を休むことができる制度です。多くの自治体で、給与は支給される扱いになっています。
期間は自治体の条例・規則によって定められており、目安としては数十日〜半年程度の幅で設定されているケースが多いですが、具体的な日数は自治体ごとに異なります。
病気休職:長期療養が必要な場合の身分
病気休暇の期間が満了しても療養が必要な場合、病気休職という身分に切り替わります。
こちらは「休暇」というよりも、療養のために勤務しない期間として扱われる「身分」に近い制度で、期間の上限も病気休暇より長く設定されています(多くの自治体で3年程度)。
給与は、休職に入ってから一定期間は一部支給され、その後は無給に切り替わるのが一般的なパターンです。
切り替わるタイミングは自治体ごとに異なる
「病気休暇から病気休職にいつ切り替わるか」「病気休職中いつまで給与の一部が支給されるか」は、自治体・条例によって定められており、内容に差があります。
「自分の自治体ではどうなっているか」は、勤務先の人事担当・教育委員会・自治体の条例で確認するのが安全です。
給与はいつまで満額?どこから減る?
ここでは、教員の多くが気にする「いつから給料が減り始めるのか」を整理します。
一般的なパターンを言葉で書くと、おおむね次のような流れになります。
- 病気休暇中:給与は支給されるのが一般的
- 病気休職に切り替わってから一定期間:自治体によっては、給与の一部が引き続き支給される
- その期間が経過した後:給与が無給に切り替わる
- 無給期間中:要件を満たせば共済組合の傷病手当金で補填される
具体的な「いつから」「いくら」は、自治体・条例ごとに違います。たとえば「病気休職開始から一定期間は給与の一部が支給され、その後は無給に切り替わる」といった流れが見られますが、具体的な期間や支給率は自治体ごとに異なります。
記事中の数字を鵜呑みにせず、ご自身の自治体の給与条例や、教育委員会・人事担当からの案内で、必ず確認してください。
賞与(期末勤勉手当)への影響
休職中の収入を考えるとき、忘れてはいけないのが賞与(期末勤勉手当)への影響です。
期末勤勉手当は、基準日時点の在職状況や、対象期間中の勤務実績などをもとに算定される仕組みになっています。休職期間が長くなるほど、対象期間中の勤務日数が減るため、賞与額にも影響が出ます。
具体的な計算方法は自治体の規則によります。「いくら減るのか」を正確に知りたい場合は、勤務先の総務担当に確認するのが確実です。
大まかには、「休職期間が短いほど影響は小さく、長くなるほど大きくなる」と捉えておけば、見通しを立てやすいと思います。
公立学校共済組合の傷病手当金とは
給与の支給が減ったり止まったりした後の支えとして、覚えておきたいのが公立学校共済組合の傷病手当金です。
ここでは、公立学校共済組合の公式案内で公表されている内容を、要点だけ整理します(詳細は必ず公式案内・所属支部の最新情報をご確認ください)。
どんなときに支給される?
病気やけがによる療養のため、引き続き勤務に服することができなくなった場合に、支給対象となります。給与(報酬)が支給されている期間は、傷病手当金の額からその分が控除されるため、実質的には給与が減額・無給になった期間の補填として機能する給付です。
支給期間の考え方
公立学校共済組合の公式案内では、傷病手当金の支給期間は、勤務できなくなった日から起算して4日目から、1年6月間(結核性の病気については3年間)とされています。さらに、組合独自の附加給付として6月が加算される場合もあります(公式サイト記載の取り扱い)。
最初の3日間は待機期間として支給対象にならない点に注意が必要です。
支給額の考え方
支給額の算定式も、公立学校共済組合の公式案内に明示されています。要約すると、
- 継続した組合員期間が12月以上の場合:直近12か月の標準報酬月額の平均の22分の1の額の3分の2が、勤務しなかった1日あたりの支給額
- 継続した組合員期間が12月未満の場合は、平均額または全組合員平均のいずれか少ない額をベースに同様に算定
「標準報酬月額の22分の1の3分の2」と聞くと難しいですが、ざっくり言えば、標準報酬をもとにおおむね3分の2相当で計算される、と捉えると全体像はつかみやすいと思います。実際の支給額は、報酬との調整や個別条件によって変わります。
ただし、報酬(給与)が支給されている場合や、出産手当金・障害厚生年金が給付されている場合は、その額を控除した額となります。
給与との関係
大事なのは、傷病手当金は「給与がある期間にダブルでもらえる」ものではないということです。給与の一部が支給されている期間は、その額が傷病手当金から控除されるため、実質的には給与減額・無給期間に入ってからが、傷病手当金の出番になります。
この前提があるため、休職に入ってすぐに「傷病手当金が大きく入る」とは限りません。給与の支給状況と組み合わせて考える必要があります。
※支給要件・額・期間・手続きの詳細は、お住まいの都道府県の公立学校共済組合支部の公式案内・最新情報をご確認ください。
自治体・勤務先で異なる部分はどこ?確認の手順
ここまで何度か書いた通り、教員の休職まわりの制度は、自治体・任命権者(教育委員会など)によって細部が異なります。「全教員が一律にこうなる」という整理にはどうしてもならない部分があります。
そこで、休職を検討するときに必ず確認しておきたいポイントと、確認の窓口を整理しておきます。
必ず確認したい3つのこと
- 病気休暇の期間と給与の取り扱い
- 病気休職に切り替わったときの給与の支給率と期間(いつまで一部支給、いつから無給か)
- 傷病手当金の支給要件・額・期間(自分のケースに当てはまるか)
確認の窓口
- 勤務先の人事担当(学校・教育委員会):自分の身分上の取り扱い・必要書類について
- 給与・服務担当部署:給与支給率・賞与算定について
- 都道府県の公立学校共済組合支部:傷病手当金などの共済給付について
- 自治体の給与条例・規則:制度の根拠となる条文
「聞きづらい」を乗り越える小さな工夫
「休職前提のことを職場に聞くのは気が引ける」と感じる方もいるかもしれません。
そんなときは、いきなり管理職に相談する前に、以下のような切り口で動いてみるのもひとつです。
- 共済組合の支部窓口に、自分の勤務先名を伝えずに制度の一般論を電話で聞く
- 都道府県の教員向け案内ページや「服務マニュアル」のPDFを検索する
- 信頼できる同僚や、すでに休職経験のある先輩に、制度面だけ短く聞く
制度を確認するだけなら、必ずしも管理職に話す必要はありません。最終的に申請するときには勤務先と話すことになりますが、その前段階で「自分はどんな選択肢があるのか」を一人で確認しておくのは、自分を守る準備になります。
私がお金の不安を感じた場面
ここからは、しばらく私の体験談になります。「制度の整理だけ知りたい」という方は、次のセクションまで読み飛ばしていただいて構いません。
正規教員として働いていた頃、休職を考え始めた私がいちばん大きく感じていた不安のひとつが、お金の見通しでした。
頭の中をぐるぐる回っていたのは、こんな問いです。
- 休職したら、毎月の生活費を払えるのか
- 家賃や日々の支出は、変わらず出ていくのに大丈夫なのか
- 収入が大きく減ってしまうのではないか
正規教員という、ある程度の安定収入がある立場だったからこそ、それが崩れる怖さは大きかったです。「給料が出ない月が来たらどうしよう」「貯金は何ヶ月もつだろう」と、夜にぼんやり考える時間が増えていきました。
結果として私の場合、当時は休職中も、口座に入ってきた金額として体感「だいたい8割くらい」はあったように記憶しています。ただし、それが給与としての支給だったのか、共済組合からの給付だったのか、制度ごとの内訳までは当時きちんと把握できていませんでした。具体的な金額や月ごとの内訳も、本記事では伏せます。
当時の私が想像していたような「収入がいきなりゼロ」という事態にはならず、想像していたよりも支えがあった、というのが正直な実感です。
ただし、これはあくまで「私の場合」です。自治体・任命権者・休暇/休職の区分によって、支給率も期間も大きく変わります。本記事を読んで「自分も8割もらえる」と一律に思い込まないでください。
休職を迷う人に、制度面で伝えたいこと
制度の話と、私自身の体験を経て、いま振り返って思うことを書いておきます。
お金の見通しが立つだけで、心の負担は軽くなる
休職を迷うときに重くのしかかるのは、「お金がどうなるか分からない」というぼんやりした不安です。
金額が満額になるかどうかとは別に、「いつまでに何が支給され、どこから減っていくのか」という流れの見通しを持てるかどうかで、気持ちの落ち着き方は明らかに変わります。
「分からないから怖い」状態のまま我慢を続けるよりも、不確かな部分を一つずつ言葉に変えていくほうが、心の負担はずっと軽くなります。
制度を知ることで、必要以上に怖がらなくていい
当時の私は、休職という言葉を「即無収入になる」かのように、半ば思い込んでいました。実際にはそうではなく、段階的な仕組みと共済組合の給付という支えがあることを、もっと早く知っておければよかったと、今は思います。
もちろん、収入が減ること自体は事実なので、必要な準備や生活設計の見直しは要ります。でも、「全額消える」と思い込んでいた状態から、「段階的に変わるけれど支えはある」と分かるだけで、休む決断のハードルはずいぶん変わります。
休職中の生活設計で、私が後から思ったこと
振り返って思うのは、「給与や制度の見通しを少しでも早く知れていたら、休む判断を必要以上に怖がらずに済んだかもしれない」ということです。
逆に言えば、制度を早めに知ることは、自分を守るための判断材料を一つ増やすことでもあります。それは、休む決断を後押しするためというより、「休む・続ける」を落ち着いて考えるための土台づくりだと、いまの私は思っています。
なお、退職金や退職時の取り扱いは別の話になるので、退職を視野に入れている方は、別途確認してみてください。
まとめ:迷ったら、まず制度を知ることから
教員の休職中の給与・手当について、おさらいしておきます。
- 病気休暇中は、給与が支給されるのが一般的
- 病気休職に切り替わってから一定期間は、給与の一部が支給される(自治体差あり)
- 無給期間に入った場合、要件を満たせば公立学校共済組合の傷病手当金で補填されうる
- 賞与(期末勤勉手当)は、休職期間に応じて影響を受ける
- 具体的な期間・支給率・額は自治体・任命権者で異なる
- 確認の窓口は、人事担当・教育委員会・公立学校共済組合の支部
「休職=即無収入」というイメージは、必ずしも正しくありません。段階的な仕組みと共済組合の給付という支えを知っておくだけで、休む・続けるの判断はぐっと落ち着いて考えられるようになります。
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復職に向けた準備や、教員を辞めた後のお金の話などは、近いうちに別記事でまとめていく予定です。
無理せず、ご自身のペースで、まずは制度を知ることから始めてみてください。
※本記事は2026年5月時点の一般的な制度情報をもとに整理しています。傷病手当金については公立学校共済組合の公式案内(kouritu.or.jp)を参照しています。実際の支給要件・額・手続きの詳細は、必ず最新の公式情報・所属支部・勤務先の人事担当でご確認ください。


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