教員の副業は全面禁止じゃない/処分事例10件と許可制度・境界線を元教員が解説【2026年版】

教員も稼ごう

「教員って副業禁止なんでしょ?」——学校の職員室でも、友人との飲み会でも、そしてSNSでも、何度となく繰り返されてきたこの言葉。もしあなたがこれを信じて「だから副業は無理」と自分に言い聞かせているなら、その前提はおそらく半分正しく、半分間違っています。

こんにちは、だにえるです。現役の小学校教員として働きながら、ブログ・オンラインスクール講師・YouTubeなどを手がけています。この記事では「教員の副業禁止」という言葉の誤解をほどき、地方公務員法第38条教育公務員特例法第17条人事院規則14-8という具体的な法令を読み解きながら、これまで全国で実際に起きた懲戒処分事例を10件以上詳細に分析します。

「何をやると処分されるのか」「逆にどこまでなら許可が出るのか」「許可申請は誰に・どう出すのか」——この境界線が見えれば、漠然とした不安は「判断材料」に変わります。怖いのは、知らないからです。

20,000字超の長文になりますが、目次から気になる章に飛んでも大丈夫。一緒に「許可制」という現実を正しく理解し、安全に一歩を踏み出すための地図を作っていきましょう。

この記事で扱う範囲と読み方

この記事は大きく17章で構成しています。忙しい方は目次から気になるところだけ読んでも大丈夫です。特におすすめの読み方は次のとおりです。

  • 「そもそも副業してよいのか不安」な方 → 1章・2章・3章を順に読む
  • 「どの副業がアウトか見極めたい」方 → 4章・5章・6章を集中的に読む
  • 「許可申請の実務を知りたい」方 → 9章を中心に読み、7章のチェックリストで自己診断
  • 「すでに副業を始めていて不安」な方 → 5章・6章・8章を先に読む
  • 「税金や時間設計が心配」な方 → 12章・13章を先に読む

なお、この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法的助言ではありません。最終的な判断は、必ず所属自治体の人事担当または専門家(弁護士・社会保険労務士等)にご相談ください。

    1. この記事で扱う範囲と読み方
  1. 1. 「教員は副業禁止」という大きな誤解
    1. 1-1. 誤解が生まれた3つの理由
  2. 2. 法的根拠を徹底解説:地方公務員法・教育公務員特例法・国家公務員法
    1. 2-1. 地方公務員法 第38条:営利企業等への従事制限
    2. 2-2. 教育公務員特例法 第17条:教員の兼職・兼業の特例
    3. 2-3. 国家公務員法と人事院規則14-8(国立学校教員の場合)
    4. 2-4. 私立学校教員の場合:就業規則がすべて
  3. 3. 許可される副業の範囲:現場で実際に承認されている活動
    1. 3-1. 許可不要(そもそも規制対象外)の活動
    2. 3-2. 許可を取れば可能な副業
    3. 3-3. ブログ・YouTubeなどの情報発信はどう扱われる?
  4. 4. 許可されない/処分されやすい副業の典型パターン
    1. 4-1. 信用失墜の可能性が高い業種
    2. 4-2. 本務に支障をきたす働き方
    3. 4-3. 児童生徒・保護者との利益相反
  5. 5. 実際の懲戒処分事例10件:匿名化して徹底分析
    1. 事例1:株式のデイトレードで減給処分(関東地方・高校教諭)
    2. 事例2:YouTube収益化で戒告処分(近畿地方・中学校教諭)
    3. 事例3:メルカリでの大量出品で訓告(中部地方・小学校教諭)
    4. 事例4:無許可で学習塾を経営し停職(関東地方・中学校教諭)
    5. 事例5:飲食店でのアルバイトで懲戒免職(北海道・小学校教諭)
    6. 事例6:風俗店勤務で懲戒免職(近畿地方・高校教諭)
    7. 事例7:虚偽の介護休暇取得で副業、懲戒免職(近畿地方・小学校教諭)
    8. 事例8:無許可のHPカウンセリング業で停職(近畿地方・中学校教諭)
    9. 事例9:無許可で格闘技道場を運営・減給(中部地方・高校教諭)
    10. 事例10:無許可のFX運用・職場PC利用で減給(中国地方・小学校教諭)
    11. 補足事例:SNS・副業広告・有料note等の新しい論点
  6. 6. 処分事例から見える3つの共通パターン
    1. パターンA:許可を取っていない(地公法38条違反)
    2. パターンB:信用失墜行為が上乗せされている(地公法33条)
    3. パターンC:本務に具体的な支障が出ている(地公法35条)
    4. 量定(処分の重さ)を決める3つの要素
  7. 7. 境界線を判断する5つのチェックポイント
    1. チェック1:報酬(対価)が発生するか?
    2. チェック2:継続性・反復性があるか?
    3. チェック3:本務に時間的・身体的影響が出るか?
    4. チェック4:児童生徒・保護者と利益相反がないか?
    5. チェック5:社会通念上、教員の信用に影響しないか?
  8. 8. 処分の種類と重さ:戒告・減給・停職・免職
  9. 9. 副業許可申請の実務フロー:誰に・いつ・どう書くか
    1. 9-1. 申請先:任命権者=教育委員会
    2. 9-2. 申請書類(一般的な必要書類)
    3. 9-3. 申請書で重視される5つの論点
    4. 9-4. 校長相談で気をつけたい5つのこと
    5. 9-5. 申請が通らなかった場合
  10. 10. 副業を阻む本当の壁:制度・文化・自己認識
  11. 10-2. 3つの壁の具体的なあらわれ方
  12. 11. 自治体ごとの最新動向:副業解禁の波
    1. 11-1. 文部科学省の動き
    2. 11-2. 先進自治体の運用例
  13. 12. 副業と税金:開業届・確定申告の論点
    1. 12-1. 副業所得の分類(雑所得か事業所得か)
    2. 12-2. 住民税と特別徴収の注意点
    3. 12-3. 開業届の提出タイミング
  14. 13. 副業を「続ける」ための時間設計と健康管理
    1. 13-1. 時間設計の3原則
    2. 13-2. 健康管理で最優先すべきこと
  15. 14. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 株やFXは副業ですか?
    2. Q2. ブログのアフィリエイト収入があっても大丈夫ですか?
    3. Q3. メルカリで不用品を売るのは副業ですか?
    4. Q4. YouTubeを顔出しなしで運営するのは問題ありますか?
    5. Q5. 家族名義で事業をやるのはOKですか?
    6. Q6. 講演や執筆の謝礼は許可が必要ですか?
    7. Q7. 副業がバレる一番多い経路は何ですか?
    8. Q8. 非常勤講師・臨時的任用教員の副業ルールは正規教員と同じですか?
    9. Q9. 退職後の再就職・副業にも制限はありますか?
    10. Q10. 懲戒処分を受けた後、副業を再開することはできますか?
  16. 15. 校長・同僚との関係を壊さない立ち回り方
  17. 15-2. 「バレない副業」より「許可を取れる副業」を探す発想
  18. 15-3. 相談相手の選び方:一人で抱え込まない
  19. 16. 副業を始める前に読んでおきたい関連記事
  20. 16-2. だにえる自身の副業遍歴と学び
  21. 17. まとめ:知らないから怖い/知れば動ける

1. 「教員は副業禁止」という大きな誤解

結論から書きます。教員(公立学校の教諭・講師)は「副業全面禁止」ではありません。正確には「原則として営利企業等への従事は制限があるが、任命権者の許可を受ければ可能」という許可制(承認制)が取られています。

つまり、ゼロかイチかではありません。0と1の間に「許可を取れば2でも3でもできる」というグラデーションがあるのです。この前提を理解していないと、次のような誤った行動に走りがちです。

  • 「全面禁止」と思い込み、一切の情報発信も止めてしまう
  • 「どうせ禁止なら、バレなきゃいい」と無許可で始めてしまう
  • 許可を取れる範囲の活動まで「違法行為」と勘違いして、可能性を自ら閉じてしまう

どれも、実態にそぐわない判断です。本記事を読み終える頃には、あなたは次の問いに自分の言葉で答えられるようになっているはずです。

  • 自分がやりたい活動は「営利企業等従事」に該当するのか
  • 該当する場合、どの法律・規則に基づき、誰に、どのように許可を取るのか
  • 許可なくやっても問題ない「例外」にはどんなものがあるのか
  • 過去の処分事例と自分の計画を比べて、リスクはどこにあるのか

なお、ここで言う「教員」は主に公立学校の教員(地方公務員)を指します。国立学校の教員(国家公務員)や私立学校の教員(労働者)は根拠法や取り扱いが異なるので、章ごとに区別して解説します。

1-1. 誤解が生まれた3つの理由

なぜここまで「副業禁止」の誤解が広まってしまったのか。理由は大きく3つあります。

理由①:管理職が「原則禁止」と説明するから
校長や教頭は、トラブル防止のため「原則として副業はダメ」と職員に伝えることが多いです。間違いではありませんが、「許可があれば可能」の部分が抜け落ちて伝わりがちです。

理由②:民間企業の「兼業禁止規定」と混同されるから
一般企業の就業規則には「副業禁止」と書かれているケースが多く、世間的な「会社員=副業できない」イメージと公務員の制度が混ざっています。実は民間でも近年は副業容認が主流になりつつありますが、イメージが先行したままです。

理由③:懲戒処分のニュースが「副業=処分」と印象づけるから
新聞やテレビで報じられる「教員が副業で懲戒処分」というニュースを見ると、「副業そのものが違法」に見えてしまいます。しかし、後ほど詳しく見るように、処分されたケースのほとんどは「無許可」「信用失墜行為」「職務専念義務違反」のいずれかが重なっています。

2. 法的根拠を徹底解説:地方公務員法・教育公務員特例法・国家公務員法

教員の副業を縛っている法律は、主に以下の4本です。学校種別・雇用形態によって適用される法律が変わるので、自分に該当するものを確認してください。

教員の区分主な根拠法規制のポイント
公立小中高校教員地方公務員法/教育公務員特例法任命権者の許可制
国立学校教員(旧)国家公務員法内閣総理大臣・所轄庁の長の許可制
国立大学法人教員各大学の就業規則法人ごとに規定/学長承認
私立学校教員労働契約法/各校就業規則就業規則次第(禁止規定あれば制限)

2-1. 地方公務員法 第38条:営利企業等への従事制限

公立学校の教員(地方公務員)にまず適用されるのがこの条文です。

第38条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

専門用語が多いので、要点を分解します。

  • ①役員等を兼ねること:営利会社の取締役・監査役・顧問などの地位
  • ②自ら営利企業を営むこと:個人事業主として事業を営む(例:店舗経営・塾経営・物販事業)
  • ③報酬を得て事業・事務に従事すること:雇用されて働く、業務委託で報酬を受ける

この3つすべてに「任命権者の許可を受けなければ」という前置きが付いています。つまり、許可を受ければ可能ということです。ただし「報酬を得て」という言葉が重要で、報酬(=対価として得る金銭等)を伴わない活動は、そもそも38条の規制対象外と解釈されています。

また、地方公務員法には関連して以下の条文もあります。副業の可否を判断するときは、38条だけでなくこれらも併せて見ることが必須です。

  • 第30条(服務の根本基準):全体の奉仕者として公共の利益のために勤務する
  • 第33条(信用失墜行為の禁止):職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない
  • 第34条(秘密を守る義務):職務上知り得た秘密を漏らしてはならない
  • 第35条(職務に専念する義務):勤務時間中は職務に専念しなければならない

副業で処分される教員の多くは、38条だけでなく33条(信用失墜)や35条(職務専念)も同時に違反しています。後述の事例分析でも、この「複合違反」が繰り返し登場します。

2-2. 教育公務員特例法 第17条:教員の兼職・兼業の特例

教員には、一般の地方公務員にはない「特例」があります。それが教育公務員特例法第17条です。

第17条 教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。

ポイントは、「教育に関する他の職・事業・事務」に関しては、地公法38条の許可に加えて、この教特法17条の規定で緩やかに取り扱われるという点です。具体的には、教育に関わる次のような活動が該当します。

  • 大学・専門学校の非常勤講師
  • 教育関係団体の役員・理事
  • 教育委員会や研修機関の講師・研修講師
  • 教科書・教育書の執筆
  • 教育学会での発表・論文執筆に伴う原稿料

「教育の専門性を持った人材が、その知見を社会に還元する」という側面があるため、教育関連の副業は比較的許可が下りやすい傾向があります。

2-3. 国家公務員法と人事院規則14-8(国立学校教員の場合)

参考として、国家公務員(国立の教育機関に所属する職員)に適用される規定も押さえておきましょう。

  • 国家公務員法第103条:営利企業の役員兼業・自営兼業の原則禁止(所轄庁の長の許可で例外)
  • 国家公務員法第104条:報酬を得ての事業・事務従事(内閣総理大臣・所轄庁の長の許可で可能)
  • 人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業):兼業許可の基準・手続を詳細に定める
  • 人事院規則14-17(研究職員の研究成果活用企業の役員等との兼業):研究成果の社会還元型兼業

国家公務員の場合、兼業を認める基準として「職務の公正の確保」「職員の職務遂行に支障がないこと」「国家公務員としての信用を損なわないこと」という3原則が繰り返し示されます。これは公立教員にもそのまま通用する考え方です。

2-4. 私立学校教員の場合:就業規則がすべて

私立学校の教員は公務員ではなく労働者なので、上記の公務員法は適用されません。代わりに労働基準法・労働契約法と、各学校の就業規則に従います。

厚生労働省のモデル就業規則は2018年の改定で「副業・兼業容認」にシフトし、多くの私立学校でも近年は届出制に移行しています。しかし、実際の運用は学校ごとに差が大きく、「原則禁止で特別な場合のみ承認」という私立学校もまだ少なくありません。自校の就業規則を必ず確認してください。

3. 許可される副業の範囲:現場で実際に承認されている活動

では、実際にはどんな副業が許可されるのでしょうか。ここからは、自治体の運用実態や人事院通知、文部科学省の通知などを踏まえて「許可される/される可能性が高い」副業を整理します。

3-1. 許可不要(そもそも規制対象外)の活動

以下の活動は、地公法38条の「営利企業等従事」には原則該当しないと解釈されており、許可なしで行えるとされています。

  1. 預貯金・株式・投資信託・FX・暗号資産(資産運用の範囲)
  2. 不動産賃貸(5棟10室・年間賃料500万円未満)(自営に該当しない小規模範囲)
  3. 家業の手伝い(無報酬・臨時)
  4. 執筆・講演(単発かつ職務と関係しない範囲)
  5. 無償のボランティア・社会貢献活動

ただし、ここには落とし穴もあります。例えば株式取引は「資産運用」の範疇であれば許可不要ですが、デイトレードのように勤務時間中に継続的に売買していると、職務専念義務(地公法35条)違反を問われます。後述の処分事例にも登場します。

許可なしで始められる副業については、教員の副業「バレない副業」はある?申請不要の5カテゴリを整理で詳しく解説しています。

3-2. 許可を取れば可能な副業

以下は、任命権者の許可を得ることで可能になる代表的な副業です。

  • 大学・予備校・塾などの非常勤講師
  • 教育委員会・公的機関の研修講師、審議会委員
  • 教科書・教育書・学術書の執筆(印税・原稿料)
  • NPO・公益法人の役員(無報酬または少額謝礼)
  • 農業・林業・漁業(家業を含む)
  • 一定規模を超える不動産賃貸業
  • 神職・僧侶などの家業継承(事情により)
  • 自治体の副業解禁制度を使った地域貢献活動

特に最近は、地域貢献型の副業を積極的に許可する自治体が増えてきました。例えば生駒市(奈良県)は2017年に「公共性のある地域貢献活動」を対象にした兼業許可の運用基準を整備し、神戸市もNPOや地域団体での副業を後押しする制度を打ち出しています。福井県や奈良県などでも同様の流れがあります。

これは「教員の経験・知識を地域に還元する」という意味で、教育公務員特例法の精神にも合致する動きです。

3-3. ブログ・YouTubeなどの情報発信はどう扱われる?

「だにえるはブログ書いてるけど、それって大丈夫なの?」とよく聞かれます。結論から言うと、無収益のうちは「個人の趣味・表現活動」であり、地公法38条の規制対象外と解釈するのが一般的です。

問題になるのは、ブログやYouTubeが収益化(広告・アフィリエイト・メンバーシップ等)されたときです。収益が発生すれば「報酬を得て事業に従事」に該当する可能性が高まり、許可申請が必要になってきます。

状態許可の要否補足
ブログ執筆(無収益)原則不要日記・趣味の範囲
Googleアドセンス・アフィリエイト開始要検討・要相談自治体により扱いが異なる
事業として継続的に運営(法人化等)許可必須営利企業の経営に該当
YouTube(無収益の動画投稿)原則不要収益化されていない段階
YouTube収益化(広告・スーパーチャット)要相談報酬発生時点で要確認

「収益化の前に手続きを済ませる」——これが鉄則です。収益が発生してから慌てて相談に行くのと、ゼロの段階で相談しておくのでは、管理職・教育委員会側の印象も手続きの進めやすさも大きく違います。

ブログ副業の具体的な始め方は教員の副業/第一歩はブログ(6ステップ完全ガイド)で全ステップを解説しています。

4. 許可されない/処分されやすい副業の典型パターン

逆に、ほぼ確実に許可が下りない、あるいは処分対象になりやすい副業のパターンもあります。以下の要素を含む場合は、強い注意が必要です。

4-1. 信用失墜の可能性が高い業種

  • 風俗業・性的サービス業全般
  • パチンコ・スロット店(ホール勤務)
  • 接待を伴う飲食店(キャバクラ・ホストクラブなど)
  • マルチ商法・ネットワークビジネス
  • 反社会勢力と関係が疑われる業種

これらは地公法33条(信用失墜行為の禁止)に抵触する可能性が極めて高く、発覚すれば懲戒免職まで含めた重い処分が下るケースが多いです。

4-2. 本務に支障をきたす働き方

  • 早朝・深夜の長時間アルバイトで翌日の授業に影響
  • 勤務時間中の副業(スマホで取引・内職等)
  • 休日返上の連日労働で健康を害する
  • 副業の繁忙期に年休・病休を偽装取得

これらは地公法35条(職務専念義務)違反や、地公法29条の「勤務実績不良」を問われます。

4-3. 児童生徒・保護者との利益相反

  • 担当する児童生徒に有料サービスを勧める
  • 勤務校の保護者を対象にした有料セミナー・商品販売
  • 児童生徒の個人情報・写真を副業に利用
  • 教材販売で勤務校の児童に継続的に関与

児童生徒との関係性を利用した副業は、たとえ合法的な業種であっても「職の信用を損なう」と判断され、処分につながります

5. 実際の懲戒処分事例10件:匿名化して徹底分析

ここからが本記事の核心です。これまで全国の都道府県・政令市教育委員会が公表してきた懲戒処分事例のうち、副業に関連するケースを10件ピックアップし、匿名化のうえ詳細に分析します。

※個人の特定を避けるため、地域・年代・一部の事実関係を抽象化しています。引用は各教育委員会の処分発表資料、地方紙・全国紙の報道、文部科学省「教育職員に係る懲戒処分等の状況」をもとにしています。

事例1:株式のデイトレードで減給処分(関東地方・高校教諭)

概要:40代男性高校教諭が、勤務時間中に職員室のパソコンや個人スマートフォンで株式の売買を日常的に繰り返していた。年間の取引額は数千万円規模、発覚の端緒は同僚からの通報。

  • 処分:減給10分の1・3月
  • 根拠:地公法35条(職務専念義務違反)
  • ポイント:株式取引そのものは資産運用の範囲で許可不要。しかし勤務時間中に行った点が致命的。「何を」ではなく「いつ・どこで」やったかで処分された典型例。

事例2:YouTube収益化で戒告処分(近畿地方・中学校教諭)

概要:30代女性教諭が、顔出しでライフスタイル系のYouTubeチャンネルを運営。登録者数は2万人を超え、Google AdSenseからの広告収入が発生していた。教育委員会への兼業許可申請は行っていなかった。

  • 処分:戒告
  • 根拠:地公法38条(無許可の営利企業等従事)
  • ポイント:動画内容そのものに違法性はなかったが、収益化後に許可を取らなかった点が違反と判断された。近年のSNS・YouTube収益化に関する典型事例。

事例3:メルカリでの大量出品で訓告(中部地方・小学校教諭)

概要:50代男性教諭が、自宅の不用品販売の域を超え、ブランド品・家電・書籍を継続的に仕入れて再販。月間売上数十万円、数年にわたり継続。

  • 処分:訓告(懲戒処分に至らない監督措置)
  • 根拠:地公法38条(自営業に該当する規模)
  • ポイント:不用品処分ならフリマアプリでも問題ないが、仕入れて販売する「物販事業」に該当する規模だったため許可申請が必要だった。「せどり・物販」を副業として検討している人は要注意。

事例4:無許可で学習塾を経営し停職(関東地方・中学校教諭)

概要:40代男性教諭が、妻名義で個別指導塾を開業。実質的な運営・指導を本人が担い、自校の生徒数名も生徒として受け入れていた。

  • 処分:停職3月
  • 根拠:地公法38条(無許可自営)・33条(信用失墜)
  • ポイント:名義を親族にしても、実態で判断される。さらに自校の生徒を対象にしたことで利益相反・信用失墜に発展。教員の副業で最も重く扱われるパターンの一つ。

事例5:飲食店でのアルバイトで懲戒免職(北海道・小学校教諭)

概要:30代男性教諭が、数年間にわたり夜間に飲食店でアルバイト。許可は取らず、発覚後に業務内容・勤務実態を一部虚偽申告。

  • 処分:懲戒免職
  • 根拠:地公法38条・虚偽報告
  • ポイント:飲食店でのアルバイト自体は、許可を取れば認められる可能性のある副業。しかし無許可+長期継続+発覚後の虚偽申告というトリプルパンチで最も重い処分に至った。

事例6:風俗店勤務で懲戒免職(近畿地方・高校教諭)

概要:20代女性教諭が、休日・深夜に風俗店で勤務。店のウェブサイトに顔写真が掲載されたことから保護者が気付き、学校・教育委員会に通報。

  • 処分:懲戒免職
  • 根拠:地公法33条(信用失墜行為)・38条
  • ポイント業種そのものが信用失墜行為に該当すると判断される典型。許可申請の余地すらない類型の副業。

事例7:虚偽の介護休暇取得で副業、懲戒免職(近畿地方・小学校教諭)

概要:50代男性教諭が、親族の介護を理由に介護休暇・病気休暇を繰り返し取得し、その期間中に家業である神職の業務や別の副業に従事していた。

  • 処分:懲戒免職
  • 根拠:地公法29条(信用失墜・虚偽申告)・38条
  • ポイント:家業の手伝い自体は許可の余地があるが、休暇制度の虚偽取得が致命傷。制度の悪用は副業以前に公務員としての根幹を揺るがす問題。

事例8:無許可のHPカウンセリング業で停職(近畿地方・中学校教諭)

概要:40代女性教諭が、個人ホームページを開設し「心理カウンセリング」の有料相談を数年間提供。
相談料は数千円〜数万円、累計数百万円の売上。教育委員会への許可申請はなし。

  • 処分:停職1月
  • 根拠:地公法38条
  • ポイント:教育・心理分野の有料サービスは、許可を取れば実施可能な範囲だった。ここでも「無許可」が決定打。許可を取っていれば処分は避けられた可能性が高い。

事例9:無許可で格闘技道場を運営・減給(中部地方・高校教諭)

概要:30代男性教諭が、空手道場の師範として指導。月謝徴収により報酬が発生。教育委員会への届出・許可申請なし。

  • 処分:減給10分の1・1月
  • 根拠:地公法38条
  • ポイント:スポーツ指導は教育公務員特例法17条で「教育に関する事業」として認められやすい領域。申請さえしていれば許可の可能性が高かった

事例10:無許可のFX運用・職場PC利用で減給(中国地方・小学校教諭)

概要:40代男性教諭が、勤務時間中に職員室のパソコン・スマホでFX取引。年間数百万円の取引。

  • 処分:減給10分の1・2月
  • 根拠:地公法35条(職務専念義務違反)
  • ポイント:FX自体は資産運用の範囲で許可不要の活動。しかし勤務時間中の取引公用PCの私的利用が問題視された。事例1と同じ構造。

参考:一般職公務員(教員以外)の類似事例として、接待を伴う飲食店勤務(戒告)、食事宅配サービス配達員(減給)、マルチ商法(停職)、無断での医師アルバイト(懲戒免職)なども報告されています。業種の違いを超えて、「無許可」「信用失墜」「本業影響」というキーワードは共通しています。

補足事例:SNS・副業広告・有料note等の新しい論点

ここ数年、従来の「アルバイト」「塾経営」とは異なる新しい副業の形が広がってきました。SNS上の情報発信からの収益化、有料note・有料メルマガ、オンラインサロン、Kindle出版、オンライン講師、クラウドソーシングでの業務委託——これらに関する処分事例はまだ蓄積途上ですが、すでにいくつかのケースが報じられています。

  • 有料noteでの教材販売で訓告:教員が自作の指導案を有料販売していたケース。勤務校の児童に使った教材の類似版という点で利益相反が問題視された。
  • オンラインサロン運営で戒告:教育関連のオンラインサロンを主宰し月額課金を受けていたが、無許可だったため服務違反を指摘された。
  • Kindle出版の印税で要指導:電子書籍の印税収入が累計数十万円に達した時点で許可申請を促された。処分は不要指導にとどまったが、事前申請の重要性が浮き彫りに。

いずれも「テクノロジーの発達で新しい収益化経路ができた」段階であり、法律や自治体の運用が追いついていない領域です。だからこそ、グレーな状態で進めるのではなく、事前に相談しておくのが安全です。相談した結果「許可は不要です」と言われれば正々堂々と進められますし、「申請が必要」と言われれば手続きを踏めばよいだけのことです。

6. 処分事例から見える3つの共通パターン

10件の事例を俯瞰すると、処分が重くなる条件には明確な共通点があります。

パターンA:許可を取っていない(地公法38条違反)

10件のうち9件が無許可でした。逆に言えば、許可を取って運営していれば、そもそも処分の対象にすらならなかった案件が多いということです。事例9(空手道場)や事例8(カウンセリング)は、申請していれば認められた可能性が高いケースです。

パターンB:信用失墜行為が上乗せされている(地公法33条)

風俗業、虚偽申告、利益相反(自校生徒の囲い込み)などは、無許可に加えて信用失墜が重なり、処分が重くなります。事例4・5・6・7が典型で、停職以上の重い処分に発展しています。

パターンC:本務に具体的な支障が出ている(地公法35条)

勤務時間中の副業、公用PCの私的利用、副業の疲労による授業準備不足などは、35条違反として独立に処分理由になります。事例1・10が典型です。

懲戒処分の種類(戒告/減給/停職/免職)と影響については、公務員副業/処分されるとどうなるの?で詳しく解説しています。

量定(処分の重さ)を決める3つの要素

処分の重さを分けるのは、主に次の3要素だと言われています。人事院の「懲戒処分の指針」や各自治体の量定基準を読み解くと、繰り返し登場するキーワードです。

  1. 行為の性質(何をしたか):風俗・反社関連は最重/継続的自営は中〜重/単発のアルバイトは軽〜中
  2. 継続期間・規模(どれだけやったか):数年単位の長期・大規模は加重/短期・少額は軽減
  3. 情状(発覚後の対応):隠蔽・虚偽申告は加重/速やかな報告・反省は軽減

つまり、たとえ無許可副業が発覚したとしても、その後の対応次第で処分が軽くなる可能性があります。隠し続けるより、気づいた時点で管理職に相談するほうが、結果的にダメージを最小化できるケースが多いのです。

7. 境界線を判断する5つのチェックポイント

ここまでの内容を踏まえ、あなたが計画中の副業が「グレーかブラックか」を自分で判定できるチェックリストを作りました。1つでも「はい」がつけば、慎重な検討・許可申請・場合によっては計画の見直しが必要です。

チェック1:報酬(対価)が発生するか?

金銭・商品券・現物支給など、対価としての経済的利益を得るなら、地公法38条の対象です。無報酬のボランティアや趣味活動であれば、原則として許可不要です。

チェック2:継続性・反復性があるか?

一度限りの講演、単発の原稿執筆、家の不用品のフリマ出品などは許可不要の可能性が高いですが、繰り返し行って継続的な収入源になっているなら「事業」として扱われ、許可対象になります。

チェック3:本務に時間的・身体的影響が出るか?

勤務時間中の作業、授業準備に支障が出る深夜労働、副業のための頻繁な休暇取得などがあれば、35条違反のリスクがあります。本務優先が絶対条件です。

チェック4:児童生徒・保護者と利益相反がないか?

勤務校の児童生徒や保護者に対し、副業で有料サービス・商品を提供することは、たとえ合法的な業種でも避けるべきです。職場の関係を私的利益に転換したと見なされ、信用失墜に直結します。

チェック5:社会通念上、教員の信用に影響しないか?

風俗・マルチ・反社関連はもちろん、ギャンブル関連、過度な扇情コンテンツの発信なども、「教員の信用」の観点から慎重に判断されます。保護者や地域住民に知られたとき、胸を張って説明できるかが一つの目安です。

8. 処分の種類と重さ:戒告・減給・停職・免職

ここで、懲戒処分の種類について簡単に整理しておきます。詳細と判例・量定基準は懲戒処分の詳細ガイドで解説していますが、全体像だけ押さえましょう。

処分内容将来への影響
戒告文書で戒める(給与減額なし)人事記録に残る・昇給に影響
減給給与の一部を一定期間減額ボーナス・昇給に影響
停職職務に就かせず給与も支給しない復職後のキャリア停滞
免職身分を失わせる(退職金も影響)教員免許も欠格事由で失効の可能性

このほか、懲戒処分に至らない「訓告」「厳重注意」「口頭注意」などの監督措置もあり、事例3のように訓告で済むこともあります。ただし訓告でも人事記録には残ります。

9. 副業許可申請の実務フロー:誰に・いつ・どう書くか

「許可制」とわかっても、実際にどう申請するのかわからないと動けません。この章では、公立学校教員の許可申請の流れを実務ベースで解説します。

9-1. 申請先:任命権者=教育委員会

公立小中学校教員の場合、任命権者は都道府県教育委員会(政令指定都市は市教委)です。ただし実務は、校長→市町村教委→都道府県教委のラインで上がっていくのが一般的です。

  1. まず校長に相談(ここが最重要ステップ)
  2. 校長が市町村教委に副申を付けて上申
  3. 市町村教委が都道府県教委へ進達
  4. 都道府県教委で審査・決裁
  5. 許可・不許可の決定通知

処理期間は自治体によりますが、概ね2週間〜2か月を見込んでおくと安心です。

9-2. 申請書類(一般的な必要書類)

  • 兼業(営利企業従事等)許可申請書
  • 副業の内容・勤務時間・報酬がわかる資料(契約書案・募集要項など)
  • 本務との両立を示す計画書(必要に応じて)
  • 副業先の登記簿謄本・事業概要(相手が法人の場合)

自治体ごとにフォーマットが異なるため、必ず勤務先教育委員会のウェブサイトか人事担当に問い合わせてください。

9-3. 申請書で重視される5つの論点

  1. 業務内容の適法性・信用適合性:違法・公序良俗違反に当たらないか
  2. 勤務時間への影響:副業の時間帯と本務との重複がないか
  3. 報酬額の妥当性:公務員としての品位に影響しない規模か
  4. 公務員秘密・職務上の情報との関係:守秘義務違反が生じないか
  5. 継続性と本務への影響:長期継続で本務に支障が出ないか

申請書を書くときは、この5点に対して「問題が生じない」ことを具体的に示すのがコツです。

9-4. 校長相談で気をつけたい5つのこと

  • 忙しい時期(学期初め・定期考査直前)は避ける
  • 文章にまとめた資料を持参する(口頭のみは避ける)
  • 「本務優先」を何度も明言する
  • 想定される懸念点を先回りして説明する
  • 即答を求めず、校長に考える時間を渡す

副業そのものより、校長との信頼関係が申請成否を分けることがよくあります。「この先生なら、本務をおろそかにしないだろう」と思ってもらえることが最重要です。

9-5. 申請が通らなかった場合

申請が不許可になった場合でも、取れる選択肢はあります。

  • 不許可理由の説明を求め、改善できる点を修正して再申請
  • 副業の規模・頻度を小さくして許可不要の範囲で再構築
  • 一旦時期を置いて、本務での評価を積んでから再申請
  • 家族名義(実態も家族運営)での事業化を検討

※最後の「家族名義」は、実態も家族が運営する形でなければ事例4のように処分対象になるので要注意です。「名義貸し」はNG、「家族が本当に主体」ならOK、という線引きを厳守してください。

10. 副業を阻む本当の壁:制度・文化・自己認識

法律を読み解いても、なお教員が副業に踏み出しにくい理由があります。それは制度だけでなく、職場文化と自己認識に根差した3つの壁です。

  • 制度の壁:許可制度の運用が自治体ごとに不透明
  • 文化の壁:「副業する先生は本業がおろそか」という職場の空気
  • 自己認識の壁:「先生なんだから〇〇すべき」という内面化された規範

この3つの壁の詳細と突破口は、教員副業を阻む3つの壁「先生だから」の呪いを解くで深く掘り下げています。法令だけを読んで「許可制だから大丈夫」と思っても、実際にはこの3つの壁が行動を止めていることが多いのです。

10-2. 3つの壁の具体的なあらわれ方

制度の壁は、申請窓口のわかりにくさ・過去の前例がない・担当者によって回答がブレる、といった形であらわれます。校長に相談しても「前例がないからわからない」と言われ、教育委員会に聞けば「まず校長に」と差し戻される——この「たらい回し」に心が折れる人も少なくありません。

文化の壁は、職員室の空気にあらわれます。「副業する暇があるなら授業準備を」「先生は子どもに全力を注ぐもの」という暗黙の前提。悪気があるわけではなく、むしろ誠実で真面目な同僚だからこそ、この価値観を持っています。批判するのではなく、自分の副業は本務の邪魔にならない形で設計することで乗り越える——これが現実的な対応です。

自己認識の壁は最も根深い壁です。「先生なんだから、お金の話はあさましい」「教育者が副業で稼ぐのはよくないんじゃないか」という、自分の中の小さな監視官。子どもの頃から「先生」という仕事に抱いてきたイメージが、いまの自分の選択肢を狭めている——そう気づくだけでも、少し軽くなります。

11. 自治体ごとの最新動向:副業解禁の波

近年、公務員副業解禁は全国的な潮流になっています。教員に関連する動きだけでも、以下のような事例があります。

  • 神戸市:2017年に「地域貢献応援制度」を導入。NPO・地域団体での有償副業を包括的に認める仕組み。
  • 生駒市:2017年に「公益的活動を行う団体等における兼業許可基準」を整備。教員も対象に含まれる。
  • 奈良県:2020年前後から「地域活動に関する兼業許可」の運用指針を明文化。
  • 福井県:地域課題解決型の副業を段階的に認可。
  • 文部科学省:「令和の日本型学校教育」の議論の中で、教員の働き方改革と併せて兼業許可の柔軟化を検討する方向性を示す通知を複数回発出。

「副業解禁」といっても、対象は「地域貢献活動」「教育関連」などに限定されることが多く、誰でもいきなり営利事業ができるわけではありません。ただし、「許可の運用が徐々に柔軟化している」ことは事実で、5年前に比べて活動しやすくなっているのは間違いありません。

11-1. 文部科学省の動き

文部科学省は「教員の働き方改革」の流れの中で、教員の専門性を社会に還元する仕組みとして兼業・兼職の積極的運用に触れる通知を複数回発出してきました。具体的には、大学での非常勤講師、国や自治体の審議会委員、研究機関での共同研究、教育関係団体の講師などが、教特法17条の「教育に関する他の職・事業・事務」に該当する活動例として示されています。

「教員は学校の中に閉じこもるのではなく、専門性を広く社会で活かしてほしい」——この方向性は、以前より明確になっています。もちろん、それは「本務に支障がない範囲で」という大前提付きですが、国の姿勢として兼業を推進する流れにあることは知っておく価値があります。

11-2. 先進自治体の運用例

前述のとおり、神戸市・生駒市・奈良県・福井県などは早い段階から地域貢献型副業を認める制度を整備してきました。共通する特徴は以下の通りです。

  • 対象を「公共性・公益性の高い活動」に限定する
  • 報酬は「活動の実費弁償+少額謝礼」程度に抑える
  • 本務との両立を示す計画書の提出を求める
  • 定期的な活動報告を条件化する
  • 不適切な活動が発覚したら許可を取り消す仕組みを明記

こうした「型」ができているかどうかが、自治体ごとの副業許可のしやすさを左右しています。自分の自治体にこれに近い制度があるか、人事課のWebサイトや手引きを確認してみてください。

12. 副業と税金:開業届・確定申告の論点

副業で収入が発生すると、避けて通れないのが税金の問題です。「会社員や公務員は年末調整で終わる」というイメージがありますが、副業所得があると確定申告が必要になるケースが多くあります。

  • 年間20万円以下の副業所得:所得税は原則確定申告不要(ただし住民税の申告は必要)
  • 年間20万円超の副業所得:確定申告が必要
  • 事業的規模(概ね年間収入300万円超・継続性あり):開業届・青色申告承認申請が検討対象

税金の話は「住民税の特別徴収」経由で勤務先に副業がバレる導線でもあります。住民税を「普通徴収」に切り替えることで、副業分の住民税を自宅に直接通知してもらう方法があります(申告書第二表の「住民税に関する事項」欄で選択)。

ただし、普通徴収に切り替えても、そもそも許可を取っていない副業は地公法38条違反です。「バレない工夫」よりも「許可を取る」ことが本質である点は忘れないでください。

12-1. 副業所得の分類(雑所得か事業所得か)

副業収入の税務上の扱いは「雑所得」か「事業所得」のどちらかに分類されます。2022年の国税庁の改正で、継続的な記帳・帳簿保存がある副業は事業所得、それ以外は原則雑所得、という線引きが明確化されました。事業所得になれば青色申告特別控除(最大65万円)が使える一方、雑所得のままだと赤字が他の所得と通算できません。

ただし、「節税のために事業所得にしたい」という理由だけで事業的規模と主張すると、税務署から指摘を受ける可能性があります。あくまで実態として事業と言える活動かどうかが判断基準です。

12-2. 住民税と特別徴収の注意点

公務員は給与から住民税が天引きされる「特別徴収」が一般的です。副業収入があると住民税額が増え、その差分が勤務先の給与計算担当者に見えることで発覚するケースがあります。確定申告時に「給与所得以外の住民税は普通徴収」を選べば、副業分の住民税は自宅に直接通知されます。

ただし繰り返しになりますが、この仕組みは「無許可副業を隠すため」に使うものではありません。許可を取って堂々と運営し、税務だけをきちんと処理するためのテクニックと位置付けてください。

12-3. 開業届の提出タイミング

副業が事業的規模になり、青色申告を選択するなら「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。開業届の提出自体は副業許可の代替ではありません。開業届=税務上の手続き/副業許可=服務上の手続き、と別物として整理しましょう。両方が必要な場合もあれば、服務上の手続きだけで足りる場合もあります。

13. 副業を「続ける」ための時間設計と健康管理

法律・処分事例・申請フローをすべてクリアしたとして、次に直面するのは「本当に続けられるのか」という問題です。教員の本務は言うまでもなく重労働。その上に副業を積むなら、時間設計と健康管理が命綱になります。

13-1. 時間設計の3原則

  1. 「週に○時間」ではなく「1日○分」で設計する:毎日15〜30分の積み上げが持続しやすい
  2. 平日夜と週末を分けて目的を変える:平日は作業・週末は学習や戦略構築
  3. 月1回の「副業休業日」を作る:燃え尽き防止と長期視点の確保

13-2. 健康管理で最優先すべきこと

  • 睡眠時間を7時間以上確保する(副業が睡眠を削り始めたら即中止)
  • 運動を週3回以上取り入れる
  • 年1回の健康診断と、必要ならメンタルヘルス相談
  • 家族との時間を先にブロックしてから副業時間を決める

副業は「労働時間を増やす競争」ではなく「小さな積み上げ」で勝つゲームです。本務に支障が出たらアウトなので、そもそも支障が出ない設計が必須です。

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14. よくある質問(FAQ)

Q1. 株やFXは副業ですか?

A. いいえ、通常は「資産運用」として許可不要です。ただし勤務時間中に取引するデイトレード級の継続性・頻度で行うと、職務専念義務違反として処分対象になり得ます(事例1・事例10参照)。

Q2. ブログのアフィリエイト収入があっても大丈夫ですか?

A. 収益化した時点で「報酬を得て事業に従事」に該当する可能性があり、許可申請を検討すべきです。発生額がゼロ〜少額の段階で校長・教育委員会に相談しておくのが安全策です。

Q3. メルカリで不用品を売るのは副業ですか?

A. 自宅の不用品をたまに出品する程度なら、私生活の一部として問題ありません。ただし、仕入れ販売・継続的な転売・月数十万円規模になると物販事業と見なされ、許可対象です(事例3)。

Q4. YouTubeを顔出しなしで運営するのは問題ありますか?

A. 顔出しの有無より、収益化されているかどうかが重要な判断軸です。無収益であれば趣味として扱われる可能性が高く、収益化時点で許可申請の検討が必要になります。匿名だから安全、ではありません。

Q5. 家族名義で事業をやるのはOKですか?

A. 実態が家族主体で運営されているなら問題ないケースが多いです。しかし名義貸しで実態は本人が運営している場合、地公法38条違反と判断され、事例4のように重い処分が下ることがあります。

Q6. 講演や執筆の謝礼は許可が必要ですか?

A. 単発・少額・職務内容と無関係な範囲であれば許可不要の運用が一般的です。ただし定期的に繰り返す場合や、教育関連で謝礼が高額になる場合は、教育公務員特例法17条の「教育に関する事業」として許可申請する運用が取られます。

Q7. 副業がバレる一番多い経路は何ですか?

A. 経験上、多い順に以下の経路です。

  1. 住民税の特別徴収通知で勤務先に金額の差異が見える
  2. 同僚・知人からの通報(SNS・対面での気付き)
  3. 保護者・児童生徒から学校への問い合わせ
  4. 副業先のトラブル・事故で警察・マスコミ経由
  5. SNSでの自己発信からの特定

「バレない工夫」は砂上の楼閣になりやすく、結局は許可を取って堂々と活動するのが最もリスクが低い戦略です。

Q8. 非常勤講師・臨時的任用教員の副業ルールは正規教員と同じですか?

A. 基本的な枠組みは同じ(地公法38条適用)ですが、運用で差があります。常勤講師は正規教員と同等の扱い、非常勤講師は勤務時間以外に副業を持つことが前提として受け入れられるケースもあります。自治体・任命権者によって運用が異なるので、必ず確認してください。

Q9. 退職後の再就職・副業にも制限はありますか?

A. 退職後は原則として制限はありません。ただし、在職中に知り得た秘密に関する守秘義務(地公法34条)は退職後も継続します。また、管理職経験者は特定の営利企業への再就職に制限がかかる場合があります(再就職規制)。

Q10. 懲戒処分を受けた後、副業を再開することはできますか?

A. 処分の種類・量定により異なります。懲戒免職でなければ教員の身分は続き、一定期間経過後に改めて許可申請することは理論上可能です。ただし、処分履歴がある状態での許可は通常より厳しく審査されます。まずは本務で信頼回復に努めるのが現実的です。

15. 校長・同僚との関係を壊さない立ち回り方

法律と手続き以上に、副業の成否を決めるのは「職場での立ち位置」です。ここでは、現場の経験から見えてきた、職場との関係を壊さずに副業を続けるコツをまとめます。

  • 本務の成果を可視化する:副業のせいで本業がおろそかになっていない、むしろ伸びていることを数字・成果物で示す
  • 情報の非対称を作らない:校長・学年主任には早い段階で情報共有
  • 愚痴・自慢を職場に持ち込まない:副業の話題は職場では最小限に
  • 児童生徒・保護者に直接売り込まない:勤務校は聖域として区別する
  • 自分と違う価値観の同僚への配慮:「副業してない人」への敬意を忘れない

職場は長期戦です。副業を楽しむために、本務と同僚関係を大切にする——これがいちばんの「守り」になります。

15-2. 「バレない副業」より「許可を取れる副業」を探す発想

ネット検索すると「公務員 副業 バレない」という記事が大量に出てきます。住民税を普通徴収にする、家族名義を使う、現金決済だけで記録を残さない——こうしたテクニックが羅列されています。しかし、これらは「違反を前提とした対策」であり、根本的な解決になりません。

発想を逆にしてみてください。「どうすればバレずにできるか」ではなく、「どうすれば堂々とできるか」を考えるのです。つまり、自分の副業アイデアを、許可が取れる形・許可不要の形に作り替えるという発想です。具体的には、次のような組み替えが有効です。

  • 「物販で儲ける」→「執筆で原稿料を得る」に変える(単発の場合は許可不要の可能性が高い)
  • 「塾を経営する」→「地域のボランティア学習支援として行う」(無報酬なら対象外)
  • 「顔出しYouTubeで副業収入」→「無収益のブランディング発信」(収益化しないうちは対象外)
  • 「アフィリエイトで稼ぐ」→「まずはアフィリエイトリンクなしの情報発信から始める」

この発想の転換ができると、「副業を諦める/違反覚悟で突き進む」の二択から抜け出せます。第三の道=正攻法で進める道が見えてきます。

15-3. 相談相手の選び方:一人で抱え込まない

副業関連の悩みは、職場では話しにくいものです。しかし、一人で抱え込むと判断が偏ります。以下のような相談相手を、段階的に持っておくと安心です。

  • 同じ自治体で副業経験のある先輩教員:実務の感覚が最もリアル
  • 組合の相談窓口:服務に関する法的知識が豊富
  • 社会保険労務士・弁護士:正式な法的助言が必要な場面で
  • オンラインコミュニティ:匿名で情報交換できるが、情報の信頼性は自己判断
  • 税務署の無料相談:税金関連の疑問は確定申告時期以外も対応してもらえる

どのルートにもメリット・デメリットがあります。重要な判断(許可申請を出すかどうか、副業をどう設計するか)は、複数の情報源を突き合わせて決めましょう。

16. 副業を始める前に読んでおきたい関連記事

16-2. だにえる自身の副業遍歴と学び

ここで少しだけ、筆者自身の話をさせてください。私(だにえる)は、現役の小学校教員として働きながら、オンラインスクールの講師、ブログ運営、YouTube準備、学校向けの教材執筆などを手がけています。

最初の一歩は、収益ゼロのブログでした。「まず書く習慣をつける」ところから始め、続くうちに少しずつ読者が増え、1年経ってから収益化の検討を始めました。収益化より前に校長・教育委員会に相談し、扱いを確認してから進めたことで、後から焦ることなく進めてこられたと感じています。

オンラインスクール講師は、教育公務員特例法17条の「教育に関する他の事業」として位置づけ、きちんと手続きを踏んだ上で取り組んでいます。「教員の経験を社会に還元する」というミッションに合致していることが、校長・教育委員会からも前向きに受け止めてもらえた要因だと思います。

この過程で学んだのは、「順番を守れば、副業は怖くない」ということです。ゼロから100%わかっている必要はなく、わからない部分は正直に「わからないので相談したい」と伝えれば、多くの場合は建設的な対話が成立します。隠して進めたら一発アウトだったかもしれない局面も、相談したことで別の選択肢が見つかりました。

17. まとめ:知らないから怖い/知れば動ける

ここまで2万字超、お付き合いいただきありがとうございました。最後に、この記事のコアを5行に凝縮してお渡しします。

  • 教員の副業は「全面禁止」ではなく「任命権者の許可制
  • 根拠は地方公務員法38条・教育公務員特例法17条・信用失墜禁止33条・職務専念35条
  • 処分事例の9割は「無許可・信用失墜・本業影響」の複合違反
  • 境界線チェックは「報酬/継続性/本務影響/利益相反/信用」の5項目
  • 動くなら「校長相談→申請→収益化」。順番を守れば怖くない

処分事例を見ていくと、「悪意のある違反者」はむしろ少数派です。多くは「知らなかった」「手続きを後回しにしていた」「相談相手がいなかった」という、普通の先生たちです。だからこそ、この記事をここまで読んでくれたあなたには、同じ轍を踏んでほしくありません。

怖いのは、知らないから。知れば、動けます。
まずは小さく「許可のいらない範囲」で始め、続けてみてから許可申請の必要性を判断する——このステップで、多くの先生がすでに副業を軌道に乗せています。

あなたの一歩を、同じ現場から応援しています。次にどの記事から読むかで、最初の一歩の速度が変わります。ブログ副業の第一歩、あるいは申請不要の副業5選から、今日の行動を1つ決めてみてください。

——だにえる

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